「代表者事項証明書」と「履歴事項全部証明書」のどっちが必要?会社登記簿謄本の基礎知識

法律事務所でお仕事をしていると,会社が当事者になったり,会社に関する様々な事件を日々多く扱いますが,このとき必要となるのが会社の登記簿謄本です。

パラリーガルをはじめ,法律事務所に勤務する人たちは,毎日のように会社の登記簿謄本を取得したり読んだりしていることと思います。

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しかし,意外とこの会社の登記簿謄本のことをよく理解せずに,なんとなく仕事をしている人が多かったりします。

「会社の登記簿謄本ってどんな種類がるの?」
「会社登記簿謄本,商業登記簿謄本,法人登記簿謄本・・・いったい何が違うの?」
「裁判するとき,履歴事項全部証明書を用意するときもあれば,代表者事項証明書の取得を指示されることもある・・・なぜだろう?」

そこで今回は,この会社の登記簿謄本の種類やその違い。
そして,どういうときにどんな登記簿謄本が必要になるのか,パラリーガルとして今さら聞けない会社登記簿謄本に関する基本知識について解説していきます。

まず,一般的に「会社の登記簿謄本」と呼ばれるものは,正しくは「商業・法人登記簿謄本」又は「商業・法人登記事項証明書」といいます。

商業・法人登記簿謄本って何?

まず,商業登記簿とは,会社(株式会社,合資会社,合名会社,合同会社,外国会社など)の商号が記載され,会社の名称・所在地・目的・資金・代表者などが誰にでもわかるようになっている帳簿です。

これに対して,法人登記簿とは,会社以外の法人の登記簿のことをいいます。
例えば,社団法人,医療法人,学校法人,宗教法人,信用金庫,信用組合,農業協同組合,労働組合などです。

ただ,会社も法人であることから,商業登記簿を指すときにも法人登記簿という表現を用いることも少なくありません。

このように,両者はよく似たものではありますが,厳密には全く別のものであり,法律の根拠も異なります。
商業登記については会社法によって定められていますが,法人登記については,例えば医療法人であれば医療法,学校法人であれば学校法人法,宗教法人は宗教法人法といったように,それぞれの法律が根拠となります。

そして,これら登記簿には,登記簿謄本と登記簿抄本があります。
「謄本」は,登記簿に記載されている全部を複写して証明したものであり,「抄本は」その一部を複写して証明したものになります。

商業・法人登記事項証明書と商業・法人登記簿謄本の違い

結論からいいますと,商業・法人登記事項証明書と商業・法人登記簿謄本は同じものと考えてOKです。

登記所(法務局)は,これまで紙ベースで管理していた登記簿について,現在ではコンピュータ・システムによって電子化された磁気ディスクに登記記録を登録して登記事務を行っています。

このコンピュータ・システムによって,登記記録に記録されている事項を証明したものが,登記事項証明書です。

これに対して,まだコンピュータ化がされておらず,紙ベースで管理されていて,そこに記載された事項を証明したものを「商業・法人登記簿謄本(抄本)」といいます。

したがって,基本的には両者は同じものであり,一般的には登記事項証明書を指すときでも,「登記簿謄本」という呼び方をすることが多いです。

商業・法人登記事項証明書の種類

登記事項証明書と一言でいっても,以下のように様々な種類があります。

履歴事項全部証明書

現在効力を有している事項の他,証明を請求する日の3年前の年の1月1日から請求する日までに抹消された事項が記載されています。

例えば、1年前に役員の変更があった場合,新しい役員のみならず,変更前の旧役員の氏名も記載されています。

そして,「会社の登記簿謄本」と言う場合,一般的にはこの「履歴事項全部証明書」を指すことが多いです。

「謄本」とは,登記簿に記載された全部の写しをいいますので,抹消された部分も含む「履歴事項全部証明書」と考えれば理解しやすいかと思います。

現在事項証明書

現在の役員氏名や発行済株式総数など ,現に効力を有する事項が記載されています。
なお,商号及び本店所在地については,1つ前の変更点は記載されることになります。

閉鎖事項証明書

会社が合併等によって消滅した場合や,会社の本店が移転するなどして管轄の法務局が移ったりした場合,その会社の登記簿は閉鎖されます。

したがって,閉鎖前の内容を把握したい場合は、閉鎖登記簿を取得する必要があります。
また,履歴事項証明書には記載されない,請求する日から3年前の1月1日以前の抹消事項が記載されています。

代表者事項証明書

現在の会社・法人の代表者の氏名・住所の他,商号・本店・会社法人等番号などが記載されています。
訴訟等の資格証明書として請求する場合には,基本的にはこの代表者事項証明書で足りる。

「履歴事項全部証明書」と「代表者事項証明書」のどっちが必要?

訴状を提出する際,当事者が会社などの法人である場合には,裁判所から「資格証明書」の提出が求められます。

このとき,「履歴事項全部証明書」を提出する場合もあれば,「代表者事項証明書」を提出することもあると思います。
あるいは,履歴事項証明書書の他に閉鎖事項証明書も併せて提出することもあるでしょう。

法律事務所でお仕事をしていると,なぜこのように,資格証明書として提出する資料が事件ごとに異なるのか,疑問に思いながら事務処理をしている人も少なくないでしょう。

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なぜ資格証明書が必要なのか?

ではまず,なぜそもそも裁判所は資格証明書を要求するのでしょうか?

会社などの法人は,私たち人間(法律では自然人といいます)と同じ様に,法律上,権利・義務の主体となることができます。

つまり,簡単に言ってしまえば,会社(法人)の名前で裁判所を通して訴えを提起したり,反対に訴えられることも可能となります。

したがって,例えば,ある会社が訴えを提起しようとした場合,訴状といわれる書面の当事者欄に「原告  株式会社〇〇〇〇 代表取締役△△△」と記載します。

しかし,これ見た裁判所は,
「原告〇〇〇〇は,本当に株式会社なのだろうか?」
と思います。

もし,本当は会社として登記されていないのであれば,会社名で裁判をすることはできません。
ですので,裁判所としては,「当事者として権利・義務の主体となり得る資格がある」ことを証明する資料を要求してくるのです。

また,「株式会社〇〇〇〇」がきちんと登記された会社であったとしても,会社は言葉を話すことはできません。

したがって,実際の訴訟手続は会社の代表者が行い,この「代表者の行為=会社の行為」となることから,訴状の当事者欄には代表取締役の氏名も記載します。

資格証明は基本的には代表者事項証明書で足りる

裁判所としては,当事者である「株式会社〇〇〇〇」にきちんと法人格があり,代表者の△△△が現在代表取締役として代表権限があることがわかればいいわけです。

したがって,資格証明書としては,基本的には代表者事項証明書で足りるということになります。

なお,全国展開している大規模な会社の場合は,資格証明書といったら「代表者事項証明書」を指すことも多いです。

履歴事項全部事項証明書などが必要となる場合

例えば,XがY会社に対して,契約違反(債務不履行といいます。)を理由に契約の解除や損害賠償請求の訴訟を提起するにあたり,資格証明書としてYの代表者事項証明書を提出したとします。

そして,XがYと契約をしたした当時,Yは「株式会社A」という名称であって,その後「Y株式会社」に屋号を変更していたとします。

そうするとXとしては,「Y=A」ということを立証しなければならないわけですが,提出した代表者事項証明書には現に効力を有している現在の会社名しか記載されていませんので,Aが社名変更してYになったという事実がわかりません。

したがって,この事実を明らかにするために,履歴事項全部証明書や閉鎖事項証明書の提出が必要となります。

なお,「大は小を兼ねる」で,常に履歴事項全部証明書を資格証明として提出するというのも間違いではありません。

しかし,会社が大企業などの場合,履歴事項全部証明書の枚数が膨大な量となり,手数料が非常に高額になってしまうこともあるため注意が必要です。

まとめ

「商業・法人登記事項証明書」と「商業・法人登記簿謄本」は,基本的には同じものです。

裁判所へ資格証明書として提出する場合には,代表者事項証明書で足りることが多いですが,よくわからないときには履歴事項全部証明書を出しおけば基本大丈夫でしょう。

しかし,大企業の場合には,履歴事項全部証明書の枚数が膨大になることも多く,費用も高額となってしまいますので注意しましょう。

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