五大(四大)法律事務所とは?各事務所の特色や必要な学歴・転職活動の方法まで

五大法律事務所とは、日本の法曹界をリードする5つの大規模法律事務所のことです。
優秀な弁護士が多く集まるため成長できる環境にあること、ダイナミックな案件に携われることなどを理由に、弁護士の中で人気の高い就職・転職先となっています。
弁護士であるなら一度は五大法律事務所で働きたいと感じたことがある方は多いのではないでしょうか?
この記事では五大法律事務所の概要や共通点を説明したうえで、各事務所の特色についても解説します。五大法律事務所に転職するために必要な要素や転職活動の方法も確認しましょう。
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五大(四大)法律事務所とは?所属弁護士数ランキング順に解説
五大法律事務所とは、所属弁護士数が上位5位までに入る以下の5事務所のことを指します。いずれも500名以上の弁護士が所属しています。
- 西村あさひ法律事務所
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所
- 森・濱田松本法律事務所
- TMI総合法律事務所
- 長島・大野・常松法律事務所
※各事務所の公式サイトに掲載されている所属弁護士数の多い順に表示しています(2026年3月時点)。
日本の法律事務所は弁護士が1人の事務所が全体の約62%を占めており、弁護士数が5人までの事務所を含めると実に約94%に上ります。五大法律事務所がいかに大規模な事務所なのかはお分かりいただけるでしょう。
参照元:弁護士白書 2025年版 第1編第3章「法律事務所の共同化及び弁護士法人の現状」
弁護士数の数え方について:各事務所が公式サイトで公表する「弁護士数」の定義はそれぞれ異なります。日本法弁護士のみを数える事務所もあれば、外国法弁護士や弁理士等の有資格者を含める事務所もあります。
また、海外提携事務所の所属弁護士を含む場合もあるため、単純な横比較には注意が必要です。弁護士白書は日本弁護士連合会への登録ベースで集計しているため、各事務所の公表数字とは差異が生じます。
西村あさひ法律事務所
有資格者数約980名を擁する国内最大規模の法律事務所です。弁護士に加えて税理士や弁理士、パラリーガルなど多職種が在籍し、総合的なリーガルサービスを提供しています。
2004年に「西村総合法律事務所」と「ときわ総合法律事務所」が統合して「西村ときわ法律事務所」となり、2007年に「あさひ法律事務所(国際部門)」と統合して現在の形になりました。国内4拠点(東京・名古屋・大阪・福岡)に加え、バンコク・北京・上海・ドバイ・フランクフルト・ニューヨークなど海外11拠点を展開しています。
銀行・金融、M&A、不動産取引、事業再生といった分野で特に高い評価を受けており、五大の中でも最も激務との声がある一方、チームとしての統制力と組織力の高さが際立つ事務所です。
中途採用ではコーポレートや知財、IT分野に関心がある弁護士のほか、語学力や留学経験を持つグローバル人材も歓迎されています。
| 事務所名 | 西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 |
| 所属弁護士数 | 約900名超(有資格者計 約980名) |
| 設立 | 2007年(西村ときわ+あさひ国際部門の統合) |
| 対応分野 | 銀行・金融/独占禁止法 ・競争法/企業法 ・M&A/不動産取引/事業再生・倒産処理 |
| 他事務所との違い | 国内最大規模で圧倒的なブランド力を持つ 海外11拠点を展開しグローバル案件に強い チームとしての組織力と統制力に定評がある |
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
弁護士等740名(うち日本法弁護士636名)で国内第2位の規模を持つ法律事務所です。2005年に「アンダーソン・毛利法律事務所」と「友常木村法律事務所」の統合により設立されました。
国内は東京・名古屋・大阪の3拠点、海外は北京・上海・香港・シンガポールなどアジア7拠点を展開しています。最大の特徴は厳格な部門制を置かないフラット&フランクな組織体制で、若手でもさまざまな分野の案件に携わる機会があります。
海外クライアントの比率が高いため英語力は必須です。五大の中でもっとも自由度が高いとの評価を得ており、「求める人材像をあえて固定しない」という採用方針にも事務所の柔軟さが表れています。
多様な人材を確保することで、クライアントの複雑化・多様化したニーズに幅広く応える狙いがあります。五大事務所の中でも最も詳細な人員データを公式サイトで開示しているのも特徴的です。
| 事務所名 | アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 |
| 所属弁護士数 | 740名(うち日本法弁護士 636名、外国弁護士 73名、弁理士 22名ほか)※2026年3月1日現在 |
| 設立 | 2005年(アンダーソン・毛利+友常木村の統合) |
| 対応分野 | 銀行・金融/キャピタルマーケット/独占禁止法・競争法/労働法/保険法/知的財産 |
| 他事務所との違い | 厳格な部門制がないフラット&フランクな組織体制 海外クライアント比率が高く英語力が必須 五大の中でもっとも自由度が高いとの評価がある |
参照元:アンダーソン・毛利・友常法律事務所 公式サイト「事務所紹介」
森・濱田松本法律事務所
弁護士817名(うち日本法弁護士653名、外国法弁護士164名)を擁する法律事務所で、2002年に「森綜合法律事務所」と「濱田松本法律事務所」の統合により誕生しました。東京を本拠に、北京・上海・シンガポール・バンコク・ヤンゴン・ホーチミンに海外拠点を構えています。
外国法弁護士164名にはバンコクのChandler MHMやヤンゴンのMyanmar Legal MHMなど海外拠点の所属弁護士が含まれており、グローバルネットワークの厚みが際立ちます。
銀行・金融やM&Aに加え、特に訴訟・紛争案件に強いことで知られ、争訟分野での実績は五大の中でも突出しています。体育会系の気風があるとも言われますが、年次を問わず率直に意見を交わせる風通しのよさが特徴です。
「理想的なワークライフバランス実現への支援」を掲げ、ベビーシッター制度や育休取得の推進など女性が働きやすい環境の整備にも積極的に取り組んでいます。中途採用では「この点だけは負けないと自信を持って言える得意分野がある人材」を求めています。
| 事務所名 | 森・濱田松本法律事務所 |
| 所属弁護士数 | 817名(うち日本法弁護士 653名、外国法弁護士 164名)※2026年2月時点 |
| 設立 | 2002年(森綜合+濱田松本の統合) |
| 対応分野 | 銀行・金融/キャピタルマーケット/独占禁止法・競争法/企業法・M&A/投資ファンド/労働法 |
| 他事務所との違い | 訴訟・紛争案件への対応力が五大の中でも突出している ベビーシッター制度や育休推進などWLB支援が充実 海外拠点の外国法弁護士を含めたグローバル体制が強い |
参照元:森・濱田松本法律事務所 公式サイト「About the Firm」
TMI総合法律事務所
弁護士609名に加え弁理士101名が在籍する法律事務所で、1990年の設立以来、合併や統合を一切経ずに創業者が一代で現在の規模を築き上げた点が他の四事務所と大きく異なります。
国内は東京・名古屋・大阪・京都・神戸・福岡の6拠点、海外は上海・北京・ハノイ・シンガポール・シリコンバレー・ロンドンなど多数の拠点を展開しています。
特許・商標・著作権といった知的財産分野に圧倒的な強みを持ち、弁理士が多数在籍していることが他の五大事務所にない特徴です。新しいことへのチャレンジ精神が旺盛で風通しもよく、業務量の調整やフレキシブルな働き方が可能なことから若手弁護士からの注目度が特に高い事務所です。
企業法や紛争解決、生命科学など取り扱い分野も幅広く、知財系に限らない総合力を備えています。弁護士白書の568名(2025年3月時点)と比較すると約41名増と、五大の中で最も高い増加率を記録しています。
| 事務所名 | TMI総合法律事務所 |
| 所属弁護士数 | 弁護士 609名+弁理士 101名(総所員数 約1,317名)※2026年初頭時点 |
| 設立 | 1990年(創業、合併・統合なし) |
| 対応分野 | 企業法/紛争解決/生命科学/知的財産(特許・商標・著作権) |
| 他事務所との違い | 合併・統合を経ず創業者が一代で築いた唯一の五大事務所 弁理士101名が在籍し知的財産分野に圧倒的な強みを持つ 業務量の調整やフレキシブルな働き方が可能 |
参照元:TMI総合法律事務所 採用サイト/World Trademark Review 1000(2026年版)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士637名(うち日本弁護士571名、外国弁護士66名)の法律事務所で、2000年に「長島・大野法律事務所」と「常松簗瀬関根法律事務所」が合併して誕生しました。
この合併が契機となり、日本の法律事務所の大規模化が加速したとも言われています。東京のほかニューヨーク・シンガポール・バンコク・ホーチミン・ハノイ・上海に拠点を持ち、世界各地の一流外国法律事務所との協力体制を築いて国際案件に注力しています。
留学支援や外部研修、行政機関への出向など弁護士育成の仕組みが充実しているのが際立った特徴です。年俸をはじめとする待遇面への評価も高く、チームでの協働を重視する事務所文化があります。中途採用では、チームで仕事ができるかどうかが重要な判断基準のひとつとされています。
五大事務所の中で最も簡潔かつ明確な人員データを公式サイトで開示しています。
| 事務所名 | 長島・大野・常松法律事務所 |
| 所属弁護士数 | 637名(うち日本弁護士 571名、外国弁護士 66名)※2026年3月1日現在 |
| 設立 | 2000年(長島・大野+常松簗瀬関根の合併) |
| 対応分野 | 銀行・金融/キャピタルマーケット/独占禁止法・競争法/企業法・M&A/紛争解決/保険法 |
| 他事務所との違い | 留学・外部研修・行政出向など弁護士育成体制が充実 世界の一流外国法律事務所との協力体制を構築 年俸など待遇面への評価が五大の中でも高い |
参照元:長島・大野・常松法律事務所 公式サイト「事務所紹介」
弁護士白書(2025年3月)との比較
弁護士白書 2025年版(2025年3月31日時点)に掲載された弁護士数と、各事務所の公式サイトによる最新の公表数字を比較すると以下のとおりです。弁護士白書は日本弁護士連合会への登録ベースで集計しているため、各事務所が独自に公表する数字とは集計範囲が異なる点に留意が必要です。
| 事務所 | 弁護士白書 (2025年3月) |
公式サイト最新 (2026年2〜3月) |
備考 |
| 西村あさひ | 665名 | 約900名超 (有資格者 約980名) |
提携・アライアンス事務所含む。日本法弁護士のみの内訳は非公開 |
| アンダーソン・毛利・友常 | 602名 | 740名 (日本法弁護士 636名) |
弁理士22名、外国弁護士73名等を含む。日本法弁護士は前年比+34名 |
| 森・濱田松本 | 665名 | 817名 (日本法弁護士 653名) |
海外拠点の外国法弁護士164名含む。日本法弁護士はほぼ横ばい |
| TMI総合 | 568名 | 609名 +弁理士 101名 |
前年比+41名(+7.2%)で五大中最高の増加率 |
| 長島・大野・常松 | 583名 | 637名 (日本弁護士 571名) |
外国弁護士66名含む。日本弁護士数はほぼ横ばい |
参照元:弁護士白書 2025年版/各事務所公式サイト(2026年3月22日確認)
五大法律事務所の特徴
五大法律事務所(西村あさひ、アンダーソン・毛利・友常、森・濱田松本、TMI総合、長島・大野・常松)は、弁護士500〜900名超を抱える日本最大級の法律事務所グループです。「年収が高いらしい」「めちゃくちゃ忙しいらしい」……そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、年収・働き方・業務内容・パラリーガルの4つのテーマで、五大法律事務所のリアルな姿をまとめました。
五大法律事務所の年収は?
1年目から年収1,000万円超の世界
五大法律事務所に入ると、1年目からボーナス込みで年収1,000万〜1,200万円ほどが見込めます。特に西村あさひ・AMT・森濱田・長島大野常松のいわゆる「四大」はほぼ横並びで、初年度1,200万円前後が相場です。TMI総合はやや幅がありますが、それでも1,000万円を下回ることはまずありません。
一般的な法律事務所の新人弁護士の初任給が400万〜600万円であることを考えると、おおよそ2倍の水準にあたります。弁護士全体の平均年収が約971万円(令和4年賃金構造基本統計調査)なので、五大の1年目はすでにその平均を上回っている計算になります。
年次が上がるとどうなる?
年次とともに報酬も着実に伸びていきます。ざっくりとした目安はこんな感じです。
| 経験年数 | 推定年収 |
| 1年目 | 1,100万〜1,250万円 |
| 3年目 | 1,300万〜1,500万円 |
| 5年目 | 1,500万〜2,000万円 |
| シニアアソシエイト | 1,600万〜3,000万円 |
| ジュニアパートナー | 4,000万〜5,000万円以上 |
| エクイティ・パートナー | 1億円〜数億円 |
毎年50万〜250万円ほどのベース昇給があり、4〜5年目で年収2,000万円に届くケースも珍しくありません。留学を経てシニアアソシエイトになると2,500万〜3,000万円に達し、パートナーに昇格すれば一気にステージが変わります。
ただし、パートナーになれるのは同期の15〜20%ほどというかなりの狭き門。到達までに12年ほどかかるのが一般的です。
ボーナスや報酬の仕組み
報酬は基本的に「固定給+業績連動ボーナス」という構成で、ボーナスは3年目あたりから大きく伸びる傾向があります。事務所ごとに特色があり、たとえばAMTには歩合給の要素が含まれていて、自分の稼働量に応じて収入をある程度コントロールできます。
インハウスとの比較
近年はインハウス(企業内弁護士)の年収も上がっています。JILAの2024年調査では65.4%が年収1,000万円超ですが、五大の中堅弁護士(5年目以降で1,500万〜2,500万円)と比べるとまだ差があります。とはいえ「ワークライフバランスを優先するなら、年収が少し下がってもインハウスに行きたい」という弁護士が多いのが現状です。
業務時間について激務?月300時間勤務のリアル
率直に言って、五大法律事務所の働き方はかなりハードです。アソシエイトの勤務時間は月300〜400時間が目安とされ、一般的な法律事務所(月150〜200時間)のおよそ2倍にあたります。
四大経験者のあいだでは「勤務時間は朝9時から翌朝5時(AM)」というジョークがあるほど。繁忙期には5日連続で深夜2〜3時退社ということも珍しくありません。クロスボーダー案件を抱えていると、時差の関係で深夜に海外とのミーティングが入り、昼は昼で国内案件をこなす……という二重負荷もかかります。
ただし「常にそのペース」ではない
とはいえ、常に月400時間働き詰めというわけではありません。繁忙期と閑散期の差がかなり大きいのが特徴で、午後に手が空いてしまう日もあれば、1週間連続で終電を逃す時期もある、という波のある働き方になります。
四大出身の弁護士は「平均的な姿は、朝10時頃に出勤して夜2時頃に帰宅」と振り返っています。MHM出身の弁護士によれば「月200〜240時間が平均的なビラブルアワーで、多い時は月300時間」とのことです。
事務所ごとの差
五大の中でも忙しさには差があります。
- 西村あさひ:国内最大規模で大型案件が集中するため、五大の中でも特に多忙との評判
- AMT:フラットな組織と歩合給の仕組みがあり、自由度は最も高いとの声
- TMI総合:「月300時間を超えると『忙しい』と言われるレベル」で、四大ほどの激務ではないとの評判。退職率も五大中で最も低い
最近は少しずつ改善傾向
近年はリモートワークの導入や、採用増による業務の分散、若い世代の意識変化もあって、徐々に改善傾向にあるようです。「世代が新しくなるほどマイルドな働き方になっている」との声も聞かれます。
ただし、弁護士の多くは業務委託契約で労働基準法の保護対象外であるため、制度的に長時間労働が是正されにくい構造は残っています。
「ブラックか?」と問われれば、高い報酬・充実した教育・キャリアメリットが伴う点で一般的な「ブラック企業」とは性質が異なります。とはいえ、体力・精神面への負荷が大きい環境であることは間違いありません。
取扱業務について|一般的な法律事務所との違い
そもそも扱う仕事がまったく違う
五大法律事務所と街の法律事務所では、仕事の中身が根本的に異なります。街弁が個人の離婚・相続・交通事故・債務整理などを幅広くカバーするのに対し、五大は企業法務に特化しています。個人事件はほぼ扱いません。
メインの業務領域は、M&A、ファイナンス、キャピタルマーケット、独占禁止法、知的財産、事業再生など。クライアントは東証プライム上場企業や外資系企業、メガバンク、政府系機関が中心です。
案件のスケールが桁違い
五大が手がけるディールは数十億〜数兆円規模に及ぶことがあり、弁護士費用だけで数千万〜数億円になるケースも。たとえば、日本郵政グループ3社同時IPO(約1.43兆円)、三菱東京FGとUFJの統合(数兆円規模)、日本製鉄によるUSスチール買収提案(約2兆円)など、新聞の経済面で見かけるような大型案件の裏には五大の弁護士がいます。
仕事の進め方も違う
案件はチーム制で進行し、1つのプロジェクトに数名〜数十名の弁護士が関わります。「裁判で白黒つける」紛争解決型ではなく、「取引をまとめてリスクを予防する」トランザクション型がメインという点も街弁とは大きく異なるポイントです。
クロスボーダー案件が多いため英語は日常的に使い、TOEIC800点以上が実質的に求められます。クライアントへのレスポンスは「1時間以内〜当日中」が基本。このスピード感が、五大の付加価値のひとつになっています。
各事務所の得意領域
同じ五大でも、事務所ごとにカラーがあります。
- 西村あさひ:M&A、独占禁止法・競争法、危機管理、経済安全保障。アフリカ進出支援チームを業界初で組成するなど、総合力の高さが強み
- AMT:「国際法務のパイオニア」と呼ばれ、海外クライアント比率が五大中で最高。Chambers Asia-Pacific 2025でBand 1を13分野獲得(五大トップ)
- 森・濱田松本:M&Aで日本トップの実績。2025年のM&AリーグテーブルでMergermarket・Bloomberg・LSEG・Dealogicの全てで首位を獲得
- TMI総合:弁理士約90名が在籍する「知財のTMI」。ベンチャー支援やエンタメ・スポーツ分野にも強い
- 長島・大野・常松:ファイナンス・キャピタルマーケットに特に高い評価。希望者全員に留学を認める唯一の事務所とも言われる
パラリーガルとしての働きやすさ(一般的な法律事務所との比較)
「事務員」ではなく「専門職」
五大のパラリーガルは、一般的な法律事務所でいう「事務員さん」とはかなり位置づけが違います。五大では弁護士秘書とは別枠で「専門職」として採用しており、登記手続や許認可申請、法務翻訳、法令リサーチ、デューディリジェンス補佐など、高度に専門化された業務を担当します。
AMTではパラリーガルの職種が7種類以上に細分化されていて、事業再生・コーポレート・不動産・知財・翻訳などの分野別に専門チームが組まれています。一般の法律事務所ではパラリーガルが秘書業務や電話応対を兼務するケースが多いので、ここが大きな違いです。
待遇は一般事務所の約1.5〜2倍
大卒初任給は月額24万〜29万円ほどで、初年度年収は370万〜470万円程度。経験を積むと400万〜600万円の水準になります。
|
事務所 |
大卒初任給(月額) |
経験者の目安 |
|
西村あさひ |
260,000円 |
500〜600万円 |
|
AMT |
260,000円 |
約464万円 |
|
森・濱田松本 |
240,000〜309,000円 |
430〜560万円 |
|
長島・大野・常松 |
289,000円 |
500〜750万円 |
|
TMI |
非公開(推定22〜25万円台) |
— |
一般的な法律事務所のパラリーガルが年収220万〜340万円であることを考えると、おおよそ1.5〜2倍の差があります。
弁護士とは別世界のワークライフバランス
ここが五大パラリーガルの大きな魅力です。
弁護士が月300時間以上働いている環境でも、パラリーガルの所定勤務時間は1日7時間(9:00〜17:00前後)で、完全週休二日制が守られています。
月の残業はAMTが公式に18.5時間、TMIが9.2時間と公開しており、口コミベースでも月10〜20時間程度に収まっている印象です。「土日に出勤することもなく非常に働きやすい」という声が多く聞かれます。
福利厚生も充実しています。AMTは五大で唯一フレックスタイム制(コアタイム10:00〜16:00)を導入し、育児短時間勤務は小学校3年生まで利用可能。MHMはカフェテリアプラン(ポイント制で育児・資格取得・在宅勤務サポート等に利用)を整備しています。
メリットとデメリット
メリットとしては、社会的に影響の大きい大型案件に関われること、分野別チーム配属で高い専門性が身につくこと、一般事務所より100万〜200万円以上高い給与水準、そして転職市場での評価の高さが挙げられます。
一方のデメリットとしては、「数年で新しい業務を経験しにくくなる」というキャリアの頭打ち感や、同じ事務所内の弁護士(1年目で1,000万円超)との明確な待遇格差を感じやすい点があります。「昇給が少なめ」「給与の割に業務量が多い」という声も口コミでは散見されます。
採用のハードルは事務所によって異なる
AMTが最も大規模で、秘書+パラリーガル合計で年間40〜50名を採用しています。一方、西村あさひの新卒パラリーガルは約5名、長島・大野・常松は「若干名」とかなり狭き門。TMIは新卒のみ採用で中途は行っていません。
学歴は法学部・法科大学院卒が有利ですが、AMTなど全学部から応募できる職種もあります。英語力はTOEIC650〜750点以上が目安です。
五大法律事務所で働くことのメリット・デメリット

弁護士数が多いということは、それだけ五大法律事務所で働くことに魅力を感じている弁護士が多いということでもあります。五大法律事務所で働くとどんなメリットがあるのでしょうか?
五大法律事務所(西村あさひ、森・濱田松本、長島・大野・常松、アンダーソン・毛利・友常、TMI総合)で働くことには、待遇面からキャリア形成まで多岐にわたる魅力があります。ここでは、代表的な5つのメリットについて詳しく解説します。
業界トップクラスの給与水準
一般的な法律事務所における新人弁護士の初任給が500万円〜600万円程度とされるなか、業界トップクラスの五大法律事務所では1年目から1,000万円を超える極めて高い年収水準が設定されている点が大きな魅力です。
案件の難易度や業務量の多さ、求められる責任の重さに比例して、自身の働いた時間や成果がダイレクトに給与へ反映されるため、若手のうちから経済的な不安を感じることなく、高いモチベーションを維持して業務に邁進できる環境が整っています。
さらに、この高い初任給をベースとして年次を重ねるごとに順調に昇給していく仕組みとなっているため、同世代のビジネスパーソンと比較しても圧倒的な高収入を得ることができ、自己研鑽を続けるうえでの強力な精神的支えとなります。
大規模・国際的案件への参画
個人事務所や中小規模の法律事務所ではリソースの観点から到底扱うことのできない、ダイナミックで社会への影響力が大きい数千億円規模の大型M&Aや複雑な国際訴訟などに携われる点は、五大法律事務所ならではの特権です。
とくに海外オフィスとの連携や外国の巨大企業を相手とするクロスボーダー案件が日常的に舞い込んでくるため、語学力を活かしてグローバルな舞台で最先端のビジネスモデルを巡る法的課題に挑戦したい弁護士にとって理想的な執務環境と言えます。
若手のうちからこうしたスケールの大きな企業法務の最前線に立ち、社会的意義の大きい実務経験を豊富に積むことで、高度なリーガルマインドと圧倒的な実務処理能力を早期に養うことができます。
優秀なプロフェッショナル環境
五大法律事務所には各専門分野において日本を代表する優秀なトップ弁護士が多数在籍しており、このような知のスペシャリスト集団の中に身を置くことで、新人であっても日常的にハイレベルな法的思考や最先端の実務ノウハウに直接触れることができます。
優秀な先輩や同僚からの厳格な指導・フィードバックを受け、周囲と切磋琢磨しながら実務に取り組むことで、独学や小規模な事務所では到底得られない圧倒的なスピードで自己成長を実現することが可能です。
さらに、数百人規模の弁護士が所属していることから、仮に人間関係で合わない人物がいたとしても別チームの案件にアサインしてもらうなど柔軟な対応が取りやすく、無用な対人ストレスを抱え込まずに仕事に集中できるという巨大組織ならではの利点もあります。
キャリアパスの広がりと有利さ
過酷な環境下で最先端の企業法務を経験したという事実は、弁護士としての強力なブランド力となり、その後のセカンドキャリアを極めて有利に展開させるための「経歴の箔」として労働市場において高く評価されます。
数年間実務経験を積んだ後に、より良好なワークライフバランスを求めて事業会社のインハウスローヤー(企業内弁護士)へ転身したり、急成長中のスタートアップ企業にCLO(最高法務責任者)として経営参画するキャリアパスも近年では非常に一般的です。
また、五大法律事務所で培った豊富なクライアント人脈や高度な専門性を武器にして、中堅事務所への移籍を図ったり、気の合う優秀な同期と独立・起業するなど、将来の選択肢が飛躍的に広がる点は長期的なキャリア戦略における最大の強みです。
充実した福利厚生と事務体制
組織としての経営基盤が極めて強固である五大法律事務所は、一般的な法律事務所と比較して福利厚生や教育体制が群を抜いて充実しており、長期的な就労を支えるサポート基盤が整っています。
各種社会保険や手当の完備に加えて、海外トップクラスのロースクールへの留学支援制度や、海外の提携法律事務所・官公庁への出向制度などが高い水準で整備されており、弁護士の中長期的なスキルアップを事務所全体で強力にバックアップしてくれます。
さらに、パラリーガル(法律事務職員)や翻訳担当者、秘書などの専門サポートスタッフが豊富に在籍しているため、付随的な事務作業に忙殺されることなく「法的検討やクライアント対応」という弁護士本来のコア業務にのみ100%集中できる恵まれた執務環境が確約されています。
五大法律事務所におけるパラリーガルの仕事
つぎに、五大法律事務所におけるパラリーガルの仕事についてご紹介します。
法的書類のドラフト作成
契約書の作成や裁判で必要になる書類の作成などパラリーガルはさまざまな法的書類の作成を行います。弁護士の監督下で作成することになりますが、リサーチはパラリーガルの仕事です。
パラリーガルになったばかりの時の業務の大半はリサーチがメインで、経験を重ねて書類を作成できるようになります。弁護士に納得してもらえる内容の資料が作れるように日々努力します。
また、資料作成のために必要となる不動産登記事項証明書や商業登記事項証明書などを法務局から取り寄せるという仕事も行います。
官公庁などでの手続き業務
5大事務所は官公庁と一緒に業務を行うことも多いため、クライアントが国になることもあります。電話対応などまずは秘書が行ってくれる場合がほとんどですが、秘書が取り次ぎパラリーガルや弁護士との相談日程、具体的な解決策の提示も、弁護士と一緒にすすめていくこともあります。
翻訳業務
弁護士の補佐として、裁判業務、交渉補佐、契約書作成、紛争の予防や解決のために必要な法令や判例のリサーチ業務も行いますが、他法律事務所と大きく違うのは『英語』が絡む案件が非常に多いことでしょう。
海外での訴訟も日常的にありますし、訴訟以外でも、契約書の翻訳といった常務もパラリーガルの仕事になります。
5大法律事務所でパラリーガルとして働くのは難しい?

予備試験合格者と法科大学院修了者の比率
五大法律事務所では予備試験ルートでの司法試験合格者を中心に採用すると言われることがあります。予備試験は難易度が高いため「予備試験を突破した人=優秀な人材」であるという考え方が根底にあるからです。
特に西村あさひ法律事務所と森・濱田松本法律事務所は予備試験ルートでの採用が多く、いずれも全体の60%以上を占めています。
ただ、五大法律事務所全体では予備試験合格者採用は71期で48.5%でした。残りの51.5%は法科大学院修了者です。これを見る限り、五大法律事務所へ入所するのに必ずしも予備試験を突破している必要はないことが分かります。
もっとも、アソシエイトの出身法科大学院は東京大学法科大学院をはじめとする難関校で占めています。したがって、五大法律事務所へ入所する可能性が高いのは「予備試験」または「難関法科大学院」経由で司法試験に合格している人だといえるでしょう。
司法試験上位合格者が評価の対象
五大法律事務所では司法試験の順位を確認される場合があり、上位合格者が評価の対象になるとも言われています。司法試験上位合格者であれば、努力の大きさや試験対策に関する要領のよさなどがあったと考えられます。
それらは今後弁護士業務をするうえでも関係する部分なので上位合格者が評価の対象になるのでしょう。
語学力があること
五大法律事務所では国際案件を多く扱っているため、語学力が必須です。ビジネスレベルの語学力、具体的には少なくともTOEIC800点以上は求められるでしょう。英語以外に中国語などもできれば評価の対象になります。
心身ともにタフであること
どの法律事務所でもハードワークが基本であり、精神的なプレッシャーも多い大型案件に関わるケースが多々あります。そのため心身ともにタフであることも五大法律事務所で働くには重要なことでしょう。
五大法律事務所への転職活動方法
最後に、五大法律事務所への転職活動方法について解説します。転職の可能性を高めるにはどの方法で活動するべきなのでしょうか?
中途採用も積極的に行っているが転職のハードルは高い
五大法律事務所では中途採用も積極的に行っています。すでに弁護士数を十分に確保できているにもかかわらず中途採用も行う理由は、新卒で採用した弁護士にはない視点や考え方、多様な経験を取り入れたいからです。
ただし、中途採用は年次に見合った経験があるのかを厳しく見られるため、司法修習生の就職活動以上にハードルが高いのが現実です。
中途採用者の経歴
中途採用者の経歴はさまざまです。たとえば元検事、元裁判官、元エンジニアなど多様な経歴を持つ人が活躍しています。
特定分野で力をつけてから転職するのも方法
ほかの法律事務所での経験を積んでもなかなか五大法律事務所の採用を突破することはできませんが、何か突出した知識・経験があればチャンスがあります。たとえば知的財産分野やIT分野など各事務所が力を入れている分野で経験を積み、転職の機会をうかがうのもひとつの方法です。
転職活動方法は主に3つ

具体的に転職活動を始める場合、活動方法は主に3つあります。
直接応募
直接応募の場合は事務所HPの採用ページを見て、応募書類を登録・送付するところから始めます。面接に進めるかどうかは書類の内容でしか判断できないため、まずは応募書類を魅力的に書けるかどうかが重要なポイントとなります。
ヘッドハンティング
事務所が強化したい専門領域で実績があるなど特筆すべき知識・経験がある弁護士であれば、ヘッドハンティングされる可能性もあります。五大に所属する知人の弁護士経由などで紹介を受けるケースも考えられるでしょう。
ヘッドハンティングでも内定が確約されるわけではありませんが、応募書類だけで判断されずに面接をしてもらいやすいというメリットはあります。
転職エージェント
転職エージェントのサポート・紹介を受けて転職する方法です。特に弁護士の転職に強みを持つ転職エージェントであれば、的確なアドバイスやサポートが受けられ、内定の可能性を高めることができます。
秘書・パラリーガル応募ならAG法律アカデミー
AG法律アカデミーは『パラリーガル専門の実務スクール』として10年以上運用しており、4大・5大事務所への就職支援実績もございます。
5大法律事務所への就職・転職は採用ハードルが非常に高く、未経験者が採用されることは新卒以外ほとんどありませんが、AG法律アカデミーで実務を学んでいただいた方を採用いただくケースが多く、未経験でも即戦力として認知いただいております。
なぜこれだけの実績を出せてこれたのかは、『未経験でも取得可能な国内唯一の専門資格』をご覧いただけますと幸いです。また、より詳細な内容をご希望の方には、資料もご用意しておりますので、お気軽にお求めください。
有利に進めたいなら転職エージェントの利用がおすすめ
予備試験を合格した人や高学歴の人であっても必ず五大法律事務所へ転職できるわけではありません。当然ながら応募書類の内容や面接も評価の対象となります。
弁護士は人間性が問われる職業でもあるので、特に面接対策が重要です。転職活動を有利に進めたいならキャリアコンサルタントが面接対策を実施してくれる転職エージェントを利用するのがよいでしょう。
五大法律事務所に関するQ&A
Q1. 五大法律事務所に入るにはどんな学歴が必要?
五大法律事務所の採用では、東京大学・京都大学・早稲田大学・慶應義塾大学の法学部や法科大学院の出身者が多数を占めています。ただし、学歴だけで合否が決まるわけではありません。
司法試験の成績(上位合格かどうか)、サマークラーク(夏季インターン)での評価、語学力、そして面接でのコミュニケーション能力が総合的に見られます。
近年は採用数が増加傾向にあるため、以前ほど「東大でなければ無理」という状況ではなくなりつつあります。地方大学出身でも上位合格であれば十分にチャンスがあります。
Q2. 五大法律事務所を辞めた後のキャリアはどうなる?
五大の弁護士の多くは、3〜7年目あたりで退所していきます。「最初から一生いるつもりで入る人は少ない」とも言われるほどで、退所後の選択肢はかなり豊富です。
最も多いのがインハウスローヤー(企業内弁護士)への転身で、ワークライフバランスの改善が主な動機です。ほかにも、準大手やブティック系事務所への移籍、独立開業、外資系法律事務所への転職、官公庁や国際機関への出向など多様な進路があります。
五大での経験は転職市場で高く評価されるため、キャリアの選択肢が狭まることはほとんどありません。
Q3. 五大法律事務所に向いているのはどんな人?
まず前提として、長時間労働に耐えられる体力と精神力は必要です。そのうえで、チームで働くことが苦にならない人、大きな案件のなかで自分の役割をきちんと果たせる人が向いています。
街弁のように「自分の裁量で何でもやる」スタイルとは正反対で、五大では1つの案件に数名〜数十名が関わるため、協調性や正確さが問われます。
英語を日常的に使う環境なので語学への抵抗がないことも大切です。逆に「自分ひとりで幅広い案件をやりたい」「すぐに独立したい」という志向が強い方は、別の選択肢のほうが合うかもしれません。
Q4. 五大法律事務所と外資系法律事務所はどう違う?
日本で「外資系法律事務所」と言えば、ベーカー&マッケンジー、クリフォードチャンス、ホワイト&ケースなどの国際事務所の東京オフィスを指します。
五大との違いは主に3つあります。まず報酬面では、外資系のほうがウォールストリート水準に合わせて高めに設定されることがあり、初年度で1,500万円を超えるケースもあります。次に業務の性質として、外資系は本国のクライアントの日本進出案件が多いのに対し、五大は日本企業の海外進出を支援する案件が中心です。
最後に組織規模では、東京オフィスの弁護士数は数十名程度が一般的で、五大のような大規模チーム体制とは異なります。
Q5. 五大法律事務所の弁護士費用はどのくらい?
五大の弁護士費用はタイムチャージ(時間制報酬)が基本で、パートナーの時間単価は1時間あたり5万〜10万円以上、シニアアソシエイトで3万〜5万円、ジュニアアソシエイトで2万〜3万円程度が相場です。
大型のM&A案件では弁護士チームが数十名体制で数か月間稼働するため、弁護士費用の総額が数千万〜数億円に達することも珍しくありません。
一般的な法律事務所の相談料が30分5,000〜1万円であることと比べると、まさに桁違いの世界です。このため五大のクライアントは大企業や機関投資家が中心であり、個人がこうした費用を負担するケースはほとんどありません。
まとめ
五大法律事務所とは弁護士数が多い上位5位にあたる法律事務所のことです。ダイナミックな案件が多い、年収が高いなど共通点が多いですが、それぞれに特色があるため自分に合うかどうかは各事務所をよく知る必要があります。
転職エージェントを利用すれば事務所の情報収集の面でもサポートを受けられるため、まずは相談してみることをおすすめします。
AG法律アカデミー
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