弁護士秘書の平均年収は約380万円|中央値や事務所規模別・年代別の解説と年収アップの方法とは

 

これから弁護士秘書を目指す方や、現職の弁護士秘書の方にとっても気になるのは年収ではないでしょうか。

弁護士秘書は法律事務所に勤務し、弁護士が本来業務に集中するためのサポートを行う職種です。高い事務処理能力やコミュニケーション能力、細やかな気遣いなど求められる要素が多い職種なので、その分年収も高いのでしょうか?

一般企業の秘書やパラリーガルと年収に違いがあるのかも気になります。

このコラムでは弁護士秘書の年収をテーマに事務所規模別や年代別、ほかの職種との比較などさまざまな角度から解説します。年収を上げるためにできることは何かも確認しましょう。

 

弁護士秘書の仕事内容とパラリーガルとの違い

まずは弁護士秘書とはどんな職業なのか、同じく法律事務所で働くパラリーガルとはどんな違いがあるのかを確認しておきましょう。

 

弁護士秘書の平均年収と中央値

弁護士秘書はどれくらい稼げる職種なのでしょうか?弁護士秘書の平均的な年収を確認しましょう。

弁護士秘書の平均年収は350万円から450万円

弁護士秘書の平均年収はおおよそ350万~450万円での間と思っていただければ良いでしょう。

具体的な年収は法律事務所の方針や事務所の経営状況などによって異なることとと、弁護士秘書の年収について正確に調査したデータはありませんのであくまで目安程度にお考えください。

同じ法律事務所で働く秘書の中でも役職や勤続年数、残業時間など個人による違いもあります。

弁護士秘書の年収の中央値は300万円

中央値とはデータを小さい順もしくは大きい順に並べて真ん中にくる値のことです。一部の高い数値に引っ張られて大きくなる平均値よりも、一般的な感覚に近い数値といえるでしょう。

弁護士秘書のみの年収から集計した中央値のデータはありませんが、秘書の年収の中央値は300万円です。弁護士秘書も秘書と年収に大差はないため、同程度と考えられます。

指標 データ
学歴 大卒中心+短大卒、高卒
男女比 男性 7.4%  女性 92.6%
平均年齢 43 歳
職業継続年数 6.98 年
現在の組織での就業期間 6.10 年
年収(中央値) 300 万円
雇用形態 正社員 59.5%、非正規社員 39.2%、経営層・自営・フリーランス 1.4%
長所 充実感・達成感、年収安定

※参考:労働政策研究・研修機構|資料シリーズ P222

 

 

 

事務所規模でみた弁護士秘書の年収

弁護士秘書の年収は法律事務所の規模によって違いがあります。大手5大法律事務所、準大手法律事務所、それ以外の小規模事務所に分けて平均年収を見てみましょう。

大手5大法律事務所

5大法律事務所で働く弁護士秘書の平均年収は以下の通りです。

  • 西村あさひ法律事務所 437万円
  • 森・濱田松本法律事務所 425万円
  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所 445万円
  • 長島・大野・常松法律事務所 478万円
  • TMI総合法律事務所 400万円~

※参考:open work|社員クチコミ・年収を探す

大手の場合は400万~450万円が平均的な年収といえます。

中小準大手法律事務所

大手5大法律事務所に次ぐ、中小準大手と呼ばれる法律事務所で働く場合の平均年収は以下の通りです。

  • ベリーベスト法律事務所 340万円(事務)|弁護士数280名
  • アディーレ法律事務所 310万円(事務)|弁護士数150名

※参考:open work|社員クチコミ・年収を探す

5大法律事務所と比べると60万~100万円ほど年収が下がります。

小規模事務所

弁護士数10名前後の小規模事務所で働く弁護士秘書の年収は、中小準大手で働く秘書とそれほど大きく変わりません。事務所によって異なりますが300万~400万円が目安となります。たとえば法律事務所の募集要項を見ると次のような年収・給与が示されていました。

  • A法律事務所:年収350万~400万円 年収イメージは400万円くらいまで
  • B法律事務所:月給21万円以上 年収例336万円
  • C法律事務所:年収330万~350万円
  • D法律事務所:月給20万円以上+諸手当+業績賞与

※参考:求人ボックス 

小規模事務所の場合は、ボーナスが1回のみ、あるいは全く出ないといった事務所もあります。その場合は年収にも大きく影響します。

 

年齢別・性別でみた弁護士秘書の年収

年齢や性別で弁護士秘書の年収に違いはあるのでしょうか。弁護士秘書の年収だけを集計したデータがないため、同程度の年収である秘書の年収をもとに確認します。

男女別

男性の弁護士秘書がいないわけではないものの、弁護士秘書は圧倒的に女性が多い職種なので男性の年収はデータが少なく、単純に比較することはできません。

秘書の年収で比べてみると、男性の平均年収は325万円、女性は334万円と女性のほうが若干高くなっています。ただし年収分布で500万円以上の層を見た場合、男性が14%であるのに対し、女性は10%にとどまっています。

※参考 doda|秘書/受付の平均年収

年代別

秘書の年収を年代別に比較します。

20代

転職サイトdodaによれば20代の秘書の平均年収は294万円でした。また転職クチコミサイト「転職会議」によると20代前半は337万円、後半は358万円が秘書の平均年収となっています。

20代弁護士秘書の年収は300万~350万円が目安といえそうです。

30代

dodaが算出した30代の平均年収は347万円転職会議では366万円でした。20代に比べると30万~50万円ほどアップしています。30代になると経験値が高くなり、それに応じて年収も上がってくると考えられます。30代の年収は350万円前後が目安です。

40代

dodaが算出した40代の平均年収は432万円、転職会議では372万円でした。40代の平均年収は400万円前後が目安となります。40代になると経験年数が10年以上のケースが多く、ベテランの領域に入るため、年収も高くなります。

 

一般企業やパラリーガルや他職種で比較した際の弁護士秘書の年収

弁護士秘書と一般企業の役員秘書やパラリーガルの年収を比較してみましょう。

一般企業の秘書との年収比較

一般企業で働く秘書の年収は350万~450万円ほどと、弁護士秘書と同程度です。また一般に秘書は事務職のひとつとして分類されるため、ほかの事務職とも大きく変わらない水準となります。

パラリーガルとの年収比較

パラリーガルの年収は350万~500万円ほどが相場です。パラリーガルは法律の専門知識が必要な職種なので、基本的に法律知識が求められない弁護士秘書と比べて年収はやや高い傾向にあります。

ただしパラリーガルの中でも法律事務の補助を専門とするケースと、実質的にはパラリーガルというより一般事務や弁護士秘書としての業務が多いケースがあります。年収が高いのはパラリーガルとしての役割を求められる前者です。

 

弁護士秘書の年収が上がりにくい理由

弁護士秘書は経験を積んでも年収が飛躍的に上がるわけではありません。弁護士秘書の年収が上がりにくい理由を解説します。

弁護士秘書の年収は大きく上がらない

一般に年収は勤続年数や役職、実績に応じて上がっていきます。弁護士秘書の年収も経験が増えるほど年収は少しずつ上がります。

ただし弁護士秘書の経験者からは「入社してから年収がほとんど変わらない」との声も聞かれます。年齢が上がっても年収がそれほど変わらないケースも少なくないようです。

中には「400万円程度まで」などと弁護士秘書の年収に上限を設けている法律事務所もあります。

一般企業のような昇給制度がないケースがある

一般企業には職種に限らず賃金制度として「定期昇給制度」が存在するのが一般的です。毎年基礎賃金が昇給するため、それをもとに計算するボーナスや残業代も増えていき、トータルでの年収は上がっていきます。

しかし弁護士秘書が働く法律事務所は一般企業と異なり昇給制度がない場合があります。また昇給制度はあっても昇給幅が非常に小さい場合も少なくありません。

直接利益を生まない職種

弁護士秘書は弁護士や営業職のようにクライアントに直接サービスを提供して利益を生む職種ではありません。

もちろん、弁護士を支えることで間接的に事務所の利益に貢献しているわけですが、採用側としては間接部門の人件費は最低限に抑えたいというのが本音です。そのため弁護士秘書の年収がほかの職種と比べて高く設定されているケースはほとんどありません。

残業が少ない

残業には法律上の割増賃金が発生するため、残業時間が多い職種ほど年収も高くなります。弁護士秘書にも残業はありますが、それほど残業時間が多いわけではありません。

残業がある場合でも1日1時間~2時間ほど、あるいはまったく残業がなく定時で帰れる日もあります。月に換算すると残業は10時間~20時間に収まるケースが多いようです。

弁護士のような資格職ではない

弁護士秘書になるために必須の資格はないため、法律事務所で採用されれば誰でも弁護士秘書になることができます。秘書検定など民間の検定試験に合格している秘書は多いですが、それがなければ秘書業務ができないわけでもありません。

多くの人に門戸が開けているという意味で、資格が不要な弁護士秘書は年収も大きく上がらない傾向にあります。

パラリーガルと比べると専門性が低い

秘書経験は必要ですが法律の専門知識はそれほど求められないので、法学部や法科大学院を出ていなくても応募条件を満たすケースが多くあります。

一方、パラリーガルは弁護士の指導のもとで弁護士業務を補助するため、より実践的な法律の知識が必須です。弁護士秘書はパラリーガルと比べると専門性が低いため、その分年収も下がってしまいます。

 

弁護士秘書になる・転職する際に知っておくべきこと

弁護士秘書への転職を目指している方が知っておくべき点を解説します。

弁護士秘書の仕事内容

弁護士秘書は多忙な弁護士を広くサポートする職種です。一般企業の役員秘書などと仕事内容はよく似ています。

  • 弁護士のスケジュール管理
  • 弁護士宛の電話・メール対応
  • 事務所の来客対応、お茶出し
  • 郵便物やFAXの管理
  • 顧問先の管理
  • 出張の旅券、宿泊施設の手配
  • 一般的な資料の作成、データ入力、ファイリング 
  • その他弁護士から指示された業務 

弁護士秘書といっても弁護士の法律事務をサポートするわけではないため、基本的に法律の知識は不要です。ただし、弁護士の指示内容を理解できる程度の一般的な法律知識は求められます。

パラリーガルとの違い

パラリーガルは弁護士が行う法律事務を、弁護士の指導のもとサポートする職種です。

  • 裁判所や法務局へ提出する書類の作成、手続き
  • 判例調査や文献などの資料探し
  • 弁護士との打ち合わせ前に行うクライアントへのヒアリング など

弁護士秘書と大きく違うのは法律の専門知識が求められる点です。パラリーガルになる人には法学部や法科大学院出身者も多く、司法試験の合格を目指しながら働く人も少なくありません。

ただし、法律事務所の中には弁護士秘書とパラリーガルを明確に区別していないケースも多くあります。秘書とパラリーガルを兼任できる人材を求めている事務所も多いため、転職の際には業務内容をよく確認することが大切です。

弁護士秘書の働き方

弁護士秘書は正社員のほかに派遣社員や契約社員、パート・アルバイトなど複数の働き方があります。ボーナスが出る、残業があるなどの事情を加味すると年収がもっとも高いのは正社員です。残業がなく決められた時間内で働きやすいのは派遣やアルバイトです。

実際の求人を見ると正社員以外の募集も多いので、応募の際には自分が希望する雇用形態かどうかをよく確認しておきましょう。

弁護士秘書に求められるスキル・経験

正確な事務処理能力やビジネスマナーが必要です。資格が不要といっても、法律事務所では優秀な事務スタッフを求めているため、求められるレベルは高いと考えてよいでしょう。

また適性として細やかな気遣いができる人物であることも求められます。弁護士の指示を即座に理解して行動に移す対応力も必要です。

弁護士秘書の需要・将来性

司法制度改革により弁護士数や法律事務所の数が増え、弁護士業界の競争は激化しています。

よりよい法律サービスを提供するために弁護士をサポートする優秀なスタッフが不可欠なので、法律事務所では弁護士秘書をはじめとする事務スタッフを定期的に募集しています。

弁護士秘書の福利厚生

法律事務所の福利厚生として、資格補助や住宅手当、所内行事や各種割引制度などがある事務所は存在します。

しかし法律事務所全体で見れば福利厚生はそれほど充実していません。保険の加入や健康診断など最低限の福利厚生は整備されているものの、退職金がない事務所も多くあります。福利厚生には期待できないと思っておきましょう。

 

弁護士秘書が年収を上げるためにできること

弁護士秘書の年収は大きくは上がりにくい傾向にありますが、努力次第では年収を上げることが可能です。年収を上げるためにどんな行動を起こすべきなのでしょうか?

大手法律事務所へ転職する

法律事務所の中で特に高い年収を得られる可能性があるのは大手法律事務所です。そのため今の法律事務所からの転職が年収を上げるためのもっとも有効な方法といえます。

大手の場合は学歴や業務経験など求められるレベルも高いですが、応募条件を満たす方は積極的に応募してみてもよいでしょう。

秘書検定の上級に合格する

実践的なビジネスマナーを学べる秘書検定は3級・2級・準1級・1級があります。社会人がアピールできるのは2級以上と言われていますが、より実務に活かしやすいという意味では面接試験がある準1級・1級の受験をおすすめします。

特に上級秘書の能力を求められる1級に合格すれば高く評価される可能性があります。

法律系の資格を取得する

弁護士秘書に高度な法律知識は求められませんが、司法書士や行政書士、社労士などの法律系の資格があれば業務の幅が広がります。学習意欲の高さが上司である弁護士に評価される可能性もあるでしょう。

転職の際にも評価の対象になるため年収が高い法律事務所への転職も視野に入ります

語学力を磨く

クライアントが外国の方である場合や、グローバル案件を保有する法律事務所の場合は来客時や電話対応、渉外活動などで秘書にも語学力が求められます。

翻訳や通訳ができるレベルの語学力があれば重宝される可能性が高く、好待遇を提示する法律事務所もあります。英語以外にも中国語のニーズも高いため、これらの語学力を磨けば年収が高い法律事務所への転職も夢ではありません。

経験を積んで弁護士の信頼を勝ち取る

弁護士秘書は弁護士との信頼関係が重要な職種です。弁護士にとって不可欠な存在となれば弁護士からの推薦や事務所の方針で待遇が改善される可能性も出てきます。経験を積んで秘書部門のリーダーになれば手当が付いて年収が上がる可能性もあります。

パラリーガルにキャリアチェンジする

弁護士秘書からパラリーガルへのキャリアチェンジも年収を上げるための有効な方法です。パラリーガルはもともとの年収相場が弁護士秘書よりも高いため、年収が上がる可能性は大きいでしょう。

法学部などを出ていなくても、これまで法律事務所で働いてきた経験があるため法律の知識を吸収しやすい土台ができているはずです。秘書業務とパラリーガルの両方ができる人材はどの法律事務所でも需要が大きいため、法律の勉強に取り組んでみるのもよいでしょう。

 

まとめ

弁護士秘書の年収は350万~450万円が目安ですが、法律事務所の規模や経験年数などによっても異なります。

今よりも年収を上げるには資格や語学の勉強などを通じて自身のスキルアップを図る、業務経験を積んで弁護士の信頼を勝ち取るなどの方法があります。

しかし所属する法律事務所によっては昇給幅が小さい、あるいは昇給制度がないなどの理由でなかなか年収が上がらないケースもあるため、年収を上げるには転職も視野に入れておくとよいでしょう。

 

 


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