パラリーガルに向いている人の特徴と求められる基礎スキルをパラリーガル専門スクールの講師が徹底解説
パラリーガルとは、弁護士業務をサポートする役割です。たくさんの案件を抱える弁護士にとって、パラリーガルのサポートは業務を円滑に進めるためにも非常に大切です。
法律に携わる仕事がしたくて「弁護士は難易度が高いけど、パラリーガルだったら挑戦できるかも」と考える方には最適な仕事といえるでしょう。
- パラリーガルに向いている人はどんな人なのか
- パラリーガルになりたいならどんなスキルを身につけるべきか
10年以上パラリーガルの育成や転職サポートをしてきたAG法律アカデミーの講師が解説します。
パラリーガルの基本的な知識|仕事内容と弁護士秘書との違い
パラリーガルの主な仕事内容とは?
パラリーガルの仕事内容は多義に渡り、弁護士のさまざまな業務をサポートする弁護士補助を行います。具体的には以下のような仕事を行います。
- 弁護士が相談者から法律相談を受ける前にヒアリングを行う
- 法律相談に同席し、相談内容を記録
- 法律・判例・文献などの調査
- 訴状・陳述書などの書類作成補助
- 裁判に同席して内容を記録
- 債務整理で相手方との調整
- スケジュール・案件管理や調整
- M&Aのデューデリジェンス補佐
- 官公庁への問い合わせ
- 現地調査のレポート作成
このようにパラリーガルには、一般的な会社員と比べると法律知識が必要な専門的な業務を任されることになります。しかし、これらの業務は弁護士の監督下で行われることが大前提となっているのです。
弁護士法規定により出来る事には制限がある
弁護士法では、「弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことはできない」と定めており、パラリーガル単独で法律相談、報酬額の決定、弁護士の監督がない状態での書面作成・交渉などはできないことになっています。
このように、自分の意思で動くことは少なく、基本的には弁護士のサポート的な業務を行うことになるのです。
パラリーガルと弁護士秘書との違いは?
弁護士秘書は、パラリーガルとは異なり一般的には法律に関する知識がなくても働くことができます。具体的な仕事内容としては、弁護士のスケジュール管理・調整、電話対応、書類のコピーやファイリング、裁判所への書類提出などです。
弁護士・パラリーガル・弁護士秘書がチームとなり連携しながら一つの案件に取り組んでいくことになります。
大きな事務所ではパラリーガルも弁護士秘書も両方雇われることがほとんどですが、中小事務所の場合はそうとは限りません。弁護士が自分で書類作成などを一からしたいというスタンスの場合には、パラリーガルを雇わずに弁護士秘書だけを雇う場合もあります。
逆に、弁護士秘書は雇わずに、本来弁護士秘書に依頼するようなスケジュール調整や書類整理などをパラリーガルにさせることもあるでしょう。このように中小事務所の場合はパラリーガルと弁護士秘書の業務内容が曖昧になることも多いです。
パラリーガルに向いている人の特徴
基本的なパラリーガルの仕事がわかったところで、実際にどのような人がパラッリーガルに向いているのか、ご紹介します。
正確かつ迅速な処理が出来る人
事務職の業務内容は多岐にわたり、業務量も膨大なので、スピーディーな処理能力が必要です。そのためには依頼された業務内容をすぐに理解するスピード感と理解力が必要となります。
たとえば、判例の調査ではたくさんの判例から依頼された案件に近いものを探し出しまとめてく作業がありますし、相談者との面談や裁判では記録係となり、必要な情報を簡潔にまとめることが求められます。
普段からどの情報が必要か精査したり、簡潔にまとめたりすることが得意な方は、未経験からパラリーガルの仕事をしたとして問題なく勤められると思います。
また、ミスをするとクライアントや他部署の人に迷惑をかけ、企業評価の低下につながりかねないため、正確な処理能力が求められます。集中力を高く保ち丁寧な仕事をする人が好まれる傾向があります。
サポートをするのが好き
パラリーガルは担当する弁護士から仕事を受けることになります。そのため、「人をサポートするのが好き」という人もパラリーガルには向いていると言えます。ただし、一方的な指示を待つだけではなく、担当弁護士の業務状況やスケジュールを確認し、気持ちよく仕事を進めやすいよう、主体的に動く姿勢も大事です。
素直な人もパラリーガル向き
また、自分の考えや意見を強く主張するのではなく、言われたことを素直に実行できる人もパラリーガルには向いていると言えます。採用時の話をすると、法律事務所は基本的に中途採用が多い業界です。
近年では新卒者を積極的に採用する事務所も増えていますが、新卒や未経験からパラリーガルになりたい場合は、即戦力ではなくポテンシャルが求められます。
つまり、時間をかけて育てれば、パラリーガルとして着実にスキルを上げて成長してくれること、『素直さ』をもって業務に当たってくれるかを見られることになります。誰しもはじめは未経験から業務をスタートするものですから、素直さを持っていることは大きなプラスポイントになります。
自ら調べ学ぶ意欲のある人
法律事務所での仕事は、当然ながら法律用語や独自の専門用語、裁判所独特のルールなど、覚えることは多岐に渡りますが、新しい知識を吸収することに意欲的な方なら、大いに活躍できる職場と言えます。
また、法律は毎年のように大小様々な法改正が行われます。その度に情報をきちんとキャッチアップし、新旧で変更になった点はなにか、改正後に問題になる点はなにかなど、自ら学び、業務に活かせるひとが向いています。
どんな法改正が行われたのか、その影響はどんな風に出るのかというところをきちんと勉強して、自分の中に落とし込んだうえで業務に取り組むことができれば、どんな事務所でも活躍できる、市場価値の高いパラリーガルになれるでしょう。
安易に自己解決しないという判断ができる方は貴重
基本的に弁護士は常に忙しく、かなりハードな日常を送っています。大手法律事務所のパートナー弁護士の場合、深夜まで働いていることもしばしば。つまり、いつでも丁寧に教えてくれるわけではないので、時には弁護士の細かな指示がなくても動かなくては行けない瞬間があります。
しかし、契約関係や法的事務手続きだけではなく、弁護士が必ず確認すべき案件や、難しい訴訟対応を勝手に進めることは許されません。
『1度教わったことだから大丈夫』『これは自信があるから問題ない』と、業務に慣れてきた頃は安易に進めがちですが、ある程度は進めながらも『報告・連絡・相談』を怠らずできる方も、パラリーガルになれるでしょう。
コミュニケーション能力がある
気配りができる人と似ていますがコミュニケーション能力も大切です。パラリーガルはクライアントと弁護士の間に入ることもあるので、両方の意図を汲み取りながら上手く仕事を進められるようにする必要があります。
コミュニケーションが少ないとミスリードして意図していない方向へ向かってしまうこともあるので、理解しにくいことがあればきちんと質問をするなどして本質を捉えていくことが大切です。
また、仕事上で多くの人と関わりが増えるほど報連相が大切になります。自分が得た情報を案件に携わる人にきちんと伝えていくことも忘れてはいけません。
気配りができる人
パラリーガルは弁護士に気配りをしながら仕事を進めることを求められます。多忙な弁護士の場合、スケジュールギリギリまで案件に取り組めなかったり、指示がされなかったりすることもあるでしょう。
そんな場合には自分で弁護士に対して「この案件は〇〇しておいた方が良いですか?」など聞けると弁護士も指示しやすくなります。
声かけ一つで仕事のやりやすさは変わりますので、このような気配りが自然にできる人はパラリーガルに向いています。
受け流す力がある人
パラリーガルは精神的にタフであること、いい意味で受け流すことができる方もパラリーガルに向いていると言えます。難しい案件に取り組む場合は、何日も調査に時間がかかり、残業が続くつらい瞬間もありますし、内容的に重たい案件もあります。
忙しい環境の中、時には弁護士から厳しい言い方をされてしまうこともあるかもしれませんが、これらを自分の中で受け止め過ぎずに受け流せるようになることは大事な素養です。
また、クライアントが離婚や債務整理など人生において絶望的な状況で相談に来た場合は、キツい言葉をぶつけられることもあります。そのため、大変な状況でも自分の仕事を全うできる強さが求められます。
弱者の気持ちに寄り添えること
法律相談に来る人はいろんな人がいますが、社会的弱者の人も多いです。このような人の気持ちを理解し、寄り添えるような人材がパラリーガルとして理想であり、ヒアリングをする時には配慮をする必要があります。
たとえばDVで離婚を考える人に一方的に質問をするのは傷をえぐることになるでしょう。そのため、相談者の気持ちも考えながら、一緒に情報整理していくような気遣いも必要です。
マメで調整が得意
弁護士が何件も案件を抱えている場合は、クライアントとのスケジュール調整もパズルのように組み合わせていく必要があります。
日程調整があれば、それまでに必要な資料を早めに用意するなど、臨機応変な対応をしなければいけません。そのため、マメにスケジュール・案件管理や調整ができる人が向いています。
柔軟性がある人
1人のパラリーガルが複数の弁護士をサポートすることも多いです。同じ事務所内の弁護士でも抱える案件は様々ですし、進め方も十人十色です。
そのため、各弁護士よって重視する点や業務のやり方が異なりますから『あの先生はこうだから、こうしてあげよう』『こっちの先生は民事(法務案件)事件が多いから、調べる判例はいつもより多くしてあげよう』など、それぞれの弁護士に合わせたサポートができる方は、非常にパラリーガル向きと言えます。
端的にわかりやすく報告できる人
弁護士は非常に忙しい日々を過ごしているとお伝えしましたが、法律事務所での報告は短時間で分かりやすいことが基本中の基本です。
そのため、どの事務所でも以下の能力はかなり重要なものになります。
- 「相手(上司など)の話(指示)の趣旨を正確に掴み取る能力」
- 「報告や回答する際は必ず結論から入り,その後で理由や詳細を端的に分かりやすく話すことのできる能力」
報告すべき項目が多いと、長々とした説明になりがちですが、上記のようにまず結論から述べること、状況把握はポイントを抑えた的確な回答になっているか、常に意識して答えられる方も、パラリーガルに向いています。
これはパラリーガルに限らず、仕事においてはとても大事なことですので、普段から意識して行えるよう、訓練しておくことをおすすめします。
パラリーガルに向いていない人とは
これまでご紹介してきたような「向いている人の特徴」から外れている方も、パラリーガルには向いていないと言えます。
パラリーガルは弁護士・クライアント・裁判所などたくさんの人とコミュニケーションを取りながら仕事を進める必要があるので、そもそも人と話すのが好きではなく、黙々と事務仕事をしたいような人には向いていません。
特にクライアントや裁判所など外部とのコンタクトも多くなるので、サポート業務とはいっても内部だけで完結すると思っているとパラリーガルになってからギャップを感じてしまうでしょう。
引っ込み思案で多くの人と会話するのが苦手な場合はパラリーガルを目指すのは止めておいたほうが良いかもしれません。
未経験からでもパラリーガルにはなれる?
取得必須の資格などはない
パラリーガルになるために必須な資格はないので、法律事務所に採用さえしてもらえれば未経験でもパラリーガルになることはできます。基本的には法律に関する難しい案件を取り扱うことになるので、大卒以上が条件となることが多いようです。
特に5大法律事務所と呼ばれる大手法律事務所などでは、高学歴で法学部出身であるほど採用は有利になるでしょう。
全く法律知識がないの場合、採用率が低いのは事実
未経験でもパラリーガルに転身したという方もいらっしゃいます。ただし、全く法律知識ない方が採用されるには、難易度が高いのは事実です。パラリーガルの採用事情は基本的に中途採用ですから、経験者を採用したいというニーズが大前提という現状ではあります。
しかし、未経験でもパラリーガルに転職することは可能です。
未経験から法律事務所のパラリーガルとしてさようされるには、いくつかコツがあるのですが、それについては、これまで10年以上、AG法律アカデミーがパラリーガル志望の方に対して行ってきた知識の集大成を下記にまとめましたので、ぜひご覧下さい。
パラリーガル認定資格は就職に活きる
本校のパラリーガル認定資格は民間資格ではありますが、法律事務所内での知名度は高く、この資格を取得していると未経験でも採用されやすい傾向にあります。資格取得に向けて講義を受講することになるので知識のストックがきちんとできます。
実際にこの資格を取得したことにより、未経験でパラリーガルとして採用された方は多数いらっしゃいます。レベルは3つに分かれているのですが、初級のエレメンタリー・パラリーガルを取得しておけば対外的にも基本的な法律知識があるというアピールができます。
パラリーガル認定資格講座とは
パラリーガル認定資格とは、国内唯一のパラリーガル資格として、
- 「事務職で転職に強い専門スキルを身につけたい」
- 「法律事務所に入ってから,チンプンカンプンな目にあいたくない」
- 「できる限り効率よくパラリーガルスキルを身につけたい」 など
毎年100名を超える法律事務未経験者が、パラリーガルになることを目指してAGで学び、パラリーガル資格を取得しています。
AG法律アカデミー受講のメリット
パラリーガル資格講座を修了された方の多くは、東京・大阪の法律事務所をはじめ、関東や関西以外でも札幌・名古屋・福岡など全国各地の法律事務所に就職、即戦力のパラリーガルとして迎えられ、活躍しています。
また、未経験者の法律事務所への就職内定率は81.3%(R2年1月時点)が挙げられます。受講者はAG法律アカデミーからの事務所の求人紹介も受けられるため、トータルサポートに定評を頂いております。
パラリーガルになるために身につけたい5つのスキル
最後にパラリーガルになるために身につけたいスキルについて紹介します。
法律事務の基礎知識
パラリーガルは、一般企業の事務職とは異なり法律知識が必要です。そのため、法学部出身者が採用で有利になることは間違いありませんので、基本的な法律知識を身に付けてことが望ましいでしょう。
この基礎的な法律知識ですが、法律事務所で多く扱う分野としては主に『民法』『刑法』『民事訴訟法』『刑事訴訟法』があります。特に多いのが民法で、紛争分野としては『離婚問題』『交通事故』『遺産トラブル』『債務整理』などにおける、金銭請求関連でよく出てきます。
『不法行為に基づく損害賠償請求』という名目で、不倫慰謝料請求事案などに民法709条が度々引き合いに出されます。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法第709条
難しく聞こえるかもしれませんが、条文の読み方や法律の考え方を知れば誰でも理解することができます。
こういった基礎法律に関する内容を、AG法律アカデミーでは分かりやすく解説し、就職前に実務として利用できる人材に育てる講義を提供しています。
事務処理能力
法律事務所では、相談者・依頼者からの連絡をいったんパラリーガルが受け、弁護士との面談スケジュールを調整するといった事務処理の仕事がメインになりますので、調整力や事務処理能力は高いレベルで求められます。
特に中小規模の法律事務所では、事務に加えて経理を兼任するケースもあるため、書類作りに慣れておくのが望ましいと言えます。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力もパラリーガルには非常に大切です。コミュニケーションでは、質問力を高めて相手にどんどん話しやすい状況を作り出すことが大切です。どんな人とも円滑にコミュニケーションが取れるように、どう質問すれば相手が話しやすくなるかを考えながら会話するようにしましょう。
ある程度のPCスキル
パラリーガルはPCを使うことが多いです。Microsoft Officeのワード、エクセル、パワーポイントの利用は必須でしょう。PCスキルに自信がないのであれば、パソコン教室に通い、PCスキルを測る資格であるMOSを受験するというのも一つです。
MOS検定は事務処理能力のアピールになる
マイクロソフトオフィススペシャリスト検定・通称「MOS検定」は、WardやExcelなどのパソコンソフトの利用スキルを持っていることを証明できる資格です。
パラリーガルの業務には、金額計算や図表、書類の作成などがあるためパソコンスキルは必須となります。
そのため、「MOS検定」を持っていれば、基本的な事務処理能力を持っているという証明になります。
一般事務職でも必須のスキルですから、取得しておいて損はない資格です。
受験料 | 一般レベル:10,780円 上級レベル(エキスパート):12,980円 |
合格率 | 約60%以上 |
公式HP | マイクロソフトオフィススペシャリスト |
2024年1月時点
調整能力
パラリーガルは、弁護士・クライアント・裁判所との間に入り、案件やスケジュールの調整をすることになります。たとえば、日程変更があった場合にはすぐにクライアントや裁判所へ連絡して予定を押さえて、弁護士に報告することが必要です。それだけではなく、裁判などの予定が早まった場合には資料作成など内部的な事務の管理も調整していく必要があります。
また、同時に何件もの案件に取り組むこともあるので、優先順位を決めながら案件をこなしていくことも大切です。臨機応変さを身につけ、調整能力が高くなるとパラリーガルとして上手く仕事を回すことができるでしょう。
まとめ
パラリーガルは弁護士のサポート業務を行うことになりますが、弁護士秘書とは異なり高い法律知識が必要となります。そのため法学部出身者がパラリーガルを目指すことがほとんどですが、資格がないので未経験でもパラリーガルになることもできます。
パラリーガルは、弁護士・クライアント・裁判所などの間に入るので、コミュニケーション能力の高さは必須です。また、多忙な弁護士と一緒に仕事をする場合にはスケジュールや案件の管理・調整能力も求められます。
難しい案件を受任すると、調査や資料作成で残業が増えるなど大変なこともありますが、クライアントに感謝されたり弁護士に仕事ぶりを認められたりすると大きなやりがいとなります。
AG法律アカデミー
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