【民法の基礎】相続って何だろう?(2)【単純承認、限定承認、相続放棄】
民法は、被相続人の死亡という事実によって
当然に相続が発生することを原則としていますが、
マイナスの資産も相続財産に含まれることを考えると、
勝手に財産を無限に継がされてしまっては
相続人はたまったもんじゃありませんよね。
そこで民法は、相続人の意思を尊重するために、
一定期間内に「単純承認」「限定承認」「相続放棄」
いずれにするかを選択できるようにしています(民法915条1項)。
そこで、今回は、「単純承認」「限定承認」
「相続放棄」について見て参りましょう。
|基本は単純承認
相続は、被相続人の死亡によって当然に効力が発生します。
従って、相続人が相続開始の事実を知ったかどうかや、
相続する意思があるかどうかには全く関係なく、
被相続人の死亡と同時に直ちに
相続財産が相続人に帰属します(民法896条)。
原則通りにいけば、
相続人は特に何らの「承継する」との意思表示を要さずに
被相続人の相続財産をまるっと承継することになります(単純承認)。
単純承認の場合、相続人は、
無限に被相続人の権利・義務を承継します(民法920条)。
|相続放棄
相続人は、「自己のために相続の開始があったことを
知った時」から3ヶ月以内の熟慮期間内であれば、
相続を放棄することができます(民法915条1項本文)。
なお、「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、
- 相続開始の原因事実(被相続人の死亡など)
- 自分が相続人になったこと
の両方を知ったことを意味します。
「相続したくない!」と思った場合、相続人は、
3ヶ月の熟慮期間内に、家庭裁判所に放棄の申述(民法938条)をし、
家庭裁判所が申述を受理する審判をすれば、
最初から相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。
※参考:「みなす」と「推定する」の違いについて知っておこう!
|限定承認
相続によって得たプラスの財産の限度においてのみ
被相続人のマイナスの資産を相続する旨の意思表示を
限定承認といいます(民法922条)。
限定承認は、一見合理的な制度のように思われますが、
実際使われることはほとんどありません。
なぜなら、限定承認をするには、
熟慮期間内に、財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、
さらに申述をする必要があり、しかも、
すべての相続人や包括遺贈者共同して行わなければならず、
大変面倒臭いうえに費用もかかる制度だからです
(民法915条1項、924条、923条)。
|法定単純承認
たとえ「放棄したい!」「限定承認したい!」と思っていても、
民法の定める一定の事由が存在した場合には、
単純承認したものとみなされます(法定単純承認,民法921条)。
- 相続財産の一部または全部の処分(1号)
- 熟慮期間である3ヶ月の経過(2号)
- 隠匿、消費、詐害など、債権者に対する背信行為(3号)
1号については、相続人に、相続財産を相続する意思が
黙示的に認められるため、法定承認事由とされています。
3号については、背信行為を行った相続人の保護よりも、
債権者の保護のほうを優先する必要があるからです。
相続が発生した場合は、3ヶ月の熟慮期間内に
放棄などの手続きをとらなければ単純承認したものと
みなされますので、パラリーガルとしては、
より迅速に弁護士をサポートする必要があります。
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