パラリーガルの将来性が高いといえる8つの理由|現状と活躍分野も考察

アメリカの大規模法律事務所では、必ずといっていいほど優秀な『パラリーガル』が活躍しています。またアメリカでパラリーガルになるには大学や法曹協会が認定した資格講座で学ぶ必要があり、専門職として社会から広く認知されています。

一方、日本におけるパラリーガルは特別な資格は不要であり、認知度もそれほど高い職業とはいえません。法律業界にいる弁護士の中にも、パラリーガルの業務内容をよく理解していない人がいるほどです。

しかし今、日本でもパラリーガルという職種が注目を集めつつあり、将来性にも期待が寄せられています。この記事ではパラリーガルの現状を説明したうえで、将来性が高いといえる8つの理由を解説します。

将来的に選ばれるパラリーガルになるために今から何をするべきなのかも確認しましょう。

パラリーガルの将来性は高いといえる8つの理由

ここまでの内容を見ると、パラリーガルの将来性はあまり期待できないと感じるかもしれません。しかし、それでもパラリーガルの将来性が高いといえます。その理由を解説しましょう。

弁護士・法律事務所数の増加

2000年頃に行われた司法制度改革によって弁護士および法律事務所の数が増加し、弁護士数は2047頃にピークを迎えると予測されています。

参考:弁護士白書 2020年版|弁護士人口将来予測

弁護士や法律事務所の数が増えれば、それにともない弁護士のサポート役であるパラリーガルの需要も高まると考えられます。

質の高いリーガルサービスが求められている

弁護士・法律事務所数の増加により市場の競争力が高まることで、これまで以上に質の高いリーガルサービスが求められるようになっています。一般市民には敷居が高いと思われてきた法律事務所にも、リーズナブルで利用しやすいといった部分が必要になってきており、そのサービス実現にはパラリーガルの存在が不可欠です。

パラリーガルがいれば弁護士が本来業務に専念でき、これまでと同じ時間でより質の高いリーガルサービスを提供できるようになります。

働き方改革の影響で法律事務所でも業務効率化の動き

激務の代表として知られる弁護士業界にも、働き方改革の影響による業務効率化の動きが出始めています。

弁護士が業務を効率化するためには、メールや電話・来客対応等、事務所内での業務時間を短縮する必要があります。これらはパラリーガルがサポートできる部分が大きく、パラリーガルが優秀であるほど弁護士の業務効率がアップします。

そのため効率化を重視する若手弁護士を中心に、優秀なパラリーガルを求める傾向が高まっています。

訴訟が身近なものになってきている

日本では争いごとはできるだけ避けたいと考える日本人の国民性もあり、訴訟を避ける傾向にありました。現在でもアメリカのような訴訟社会とまではいえませんが、以前と比べると訴訟が身近なものになっています。個人の権利意識の高まりや、インターネットの普及により法律が身近なものになったことなどが理由のひとつです。

景気の影響を受けにくい

弁護士業界は景気の影響を受けにくいため、景気の影響を受けやすい産業と比べると将来性が高いといえます。

不況になっても、離婚や交通事故・相続・貸金トラブルなど法律トラブルがなくなることはありません。むしろ、破産や再生手続きなど不況ならではの業務が発生します。また景気がよければ企業法務の案件が増えるなど、どのような景気であってもそのときに合った需要が発生します。

したがって、法律事務所で働くパラリーガルも将来的に需要がなくなることは考えにくいです。

ほかの事務職と比べて専門性が高い

パラリーガルは法律や手続きの知識が必要な職業です。一般事務や秘書などと比べると専門性、希少性が高いため優秀なパラリーガルは多くの法律事務所で引く手あまたとなっています。この傾向は法律事務所が存在する限り続くと考えられます。

ワークライフバランスが取りやすい=長く働ける

パラリーガルは比較的残業が少なく、ワークライフバランスが取りやすい職業です。育児や家事との両立がしやすく、正社員のほかに契約社員や派遣、アルバイトなどそのときに応じて働き方を選ぶこともできます。

結果として同じ仕事を長く続けることができ、将来にわたってスキルを維持し、業界内での経験を積むことが可能となります。経験豊富なパラリーガルは高齢になっても重宝されますし、高収入も望めます。長く働けるという意味でも将来性は高いといえるでしょう。

パラリーガルからのキャリアアップが可能

パラリーガルにはキャリアアップの選択肢が複数あります。代表的なのはより大きな法律事務所へ転職する、法律系の国家資格を取得するといったものです。近年は企業の法務部で人員を強化する傾向にあるため、元パラリーガルという肩書きが有利に働くケースも少なくありません

大手法律事務所や法務部がある企業へ転職すれば収入アップも見込めますし、法律系国家資格を取得すれば業務の幅が広がり、独立開業といった選択肢も出てきます。パラリーガルとしてスキルを磨き続けていれば将来は明るいでしょう。

パラリーガルの活躍に期待できる将来性の高い法律分野とは?

法律事務所といってもそれぞれ取り扱い分野が異なるため、どの分野を扱う法律事務所で働くかどうかでパラリーガルの将来性も変わってくるといえます。たとえば過払い金訴訟バブルが終焉を迎えましたが、一過性のブームにともない求人を募集している法律事務所の将来性はしっかりと見極めなければなりません。

IT分野

ITビジネスの発展にともない、企業や個人は知的財産権の保護や著作権の問題などITにまつわる法律問題に直面するようになりました。またネットの誹謗中傷、名誉毀損などITの発展がもたらした法的トラブルに迅速に対応するためにもIT分野に強い弁護士・法律事務所が求められています。

弁護士業界ではIT分野に強い弁護士・法律事務所がまだまだ多くないので、IT分野に力を入れている法律事務所は業界競争で優位に立ちやすく、将来性も豊かだといえます。

国際分野

経済のグローバル化が進み、国際法務の重要性が高まっています。特にアメリカや中国を中心とする外国との特許競争に関してパラリーガルの活躍が求められていますが、特許分野の専門的な知識を有するパラリーガルが少ないため、好待遇での採用にも期待できるでしょう。

倒産法務

破産や民事再生などの倒産法務は、企業が存在する限り需要がある分野です。倒産法務に関しても、専門的なスキル・知識をもつパラリーガルが少ないため希少価値が高く、将来性が高い分野だといえるでしょう。

その他社会的なニーズがなくならない分野

その他にも離婚・相続・多重債務・交通事件など、社会的なニーズがなくならない分野において、パラリーガルの業務は不可欠と言えます。。これらの分野は個人からの依頼が中心となり、案件数が多いのでパラリーガルの補助が求められるでしょう。

もっとも、たとえば交通事件などは、自動運転技術の発展により交通事故が減少すれば案件自体がなくなる可能性があります。時代の流れをよく見ながら法律事務所の将来性を考えることは不可欠であると心得ておきましょう。

選ばれるパラリーガルになるために今からできること

パラリーガルの将来性は豊かです。ただし、自身のスキルを磨き続け、選ばれるパラリーガルになることが条件です。そのために今から何ができるでしょうか?

民間のパラリーガル資格を取得する

日本リーガルアシスタント協会の「パラリーガル認定資格」は、日本に唯一存在するパラリーガル資格です。初級・中級・上級の3段階があり、個々のスキルや経験にあわせて学ぶことができます。法律事務に関する実務スキルと関連する法律知識を保有していることが客観的に証明できるため、転職・就職で大きなアピール材料となります。
※参考:一般社団法人日本リーガルアシスタント協会|パラリーガル認定資格

事務職員能力認定試験を受ける

「事務職員能力認定制度」は、法律事務所で働く職員が弁護士をサポートするために必要な法律・手続きを学ぶための研修および認定試験です。新人事務職員からベテラン事務職員まで経験に応じた受講が可能なので、今の自分のレベルにあった知識を習得し、スキルアップに役立てることができます。

日弁連が実施している認定制度なので信頼性が厚く、全国どの法律事務所に転職する際にもアピールできます。法律事務所に勤務していれば誰でも無料で受講できるので積極的な受講をおすすめします。
※参考:日本弁護士連合会|ご存じですか? 事務職員能力認定制度

法律系資格の取得を目指す

行政書士や司法書士など法律系資格があると法律に関する知識の客観的証明となり、転職や就職に際して有利に扱われる可能性が高まります。

また法律事務所の法人化により、司法書士や税理士、社会保険労務士など関連法律資格の雇用が可能になっています。そのためこれらの資格を取得しているパラリーガルは、できる業務の範囲が広がり重宝される可能性が高いと考えられます。

ゼネラリストとしての意識とスキルを高める

パラリーガルは本来専門職ですが、日本の法律事務所は一般に小規模経営なので、ゼネラリストとしての役割を求められるケースが大半です。そのため汎用性の高いスキルを高めておくことが必要となります。

具体的なスキルとしてはITスキル、経理、その他の事務スキルなどが挙げられます。特に書類作成に必要なOffice系ソフトの操作スキルは重視している法律事務所が多いため確実に磨いておくべきです。

ゼネラリストとしての意識も大切です。そうしないと「パラリーガルなのに法律に関係のない一般事務のような業務ばかりさせられる」といった不満が募り、仕事に対する満足感が得られません

選ばれるパラリーガルになるには、専門職としてだけでなくゼネラリストとして弁護士を幅広くサポートできる人材を目指すことが大切です。

サポート力を磨く

パラリーガルは自分で契約を獲得したり、創造力を駆使して新しい商品を生み出したりする仕事ではありません。求められるのは、弁護士のアシスタント的な役割です。そのためサポート力を磨き、弁護士の役に立つ人材になることが重要といえます

サポート力は今の仕事や普段の生活の中でも磨くことができます。たとえば仕事の相手や家族が何をしてほしいのかを考え、先回りで用意しておくといったことの連続で高めることができるでしょう。

コミュニケーション能力を磨く

パラリーガルは上司である弁護士の指示・要望を迅速に理解して業務を行うこと、また業務の内容を適切に報告することが必要な職種です。

顧客と弁護士との打ち合わせに先立ち、顧客とコミュニケーションを取る機会も多々あります。法律事務所の顧客は精神的にストレスを抱えている人が多いため、相手の立場を理解して配慮あるコミュニケーションを取らなければなりません。

こうしたことから、法律事務所でもコミュニケーション能力の高い人材を求めています。日頃からコミュニケーション能力を磨いておくことで選ばれるパラリーガルになれるでしょう。

語学力を磨く

語学力はパラリーガルとして働くのに必ずしも有利ではありませんが、歓迎されやすいスキルのひとつです。M&A等の渉外案件を扱う法律事務所、外資系法律事務所では必須のスキルとなります。

語学力があれば年収もアップする可能性が高く、派遣やアルバイトなどの非正規雇用でも時給は高めです。語学力の高いパラリーガルは子育て中などで長時間働けない場合でも需要があるため、経歴を途絶えさせることなく将来にわたってスキルを維持することができます。

転職して業務の幅を広げる

今の法律事務所でのスキルアップが難しいなら、転職して業務の幅を広げるのもひとつの方法です。幅広い案件に対応できるようになれば、さらに転職して大手や条件のよい法律事務所で働くことも可能となります。

パラリーガルが転職する際の主なポイント3つ

転職のポイントはいくつかありますが、主には以下の3つです。

法律事務所の特色や求めている人材像を把握して応募すること

その法律事務所がどんな人材を求めているのかを把握し、それに自分が応えられると判断した場合に応募することが大切です。前提として応募先の情報収集をしっかり行いましょう。

どんな貢献ができるのか具体的に示すこと

自分のスキルや経験が、応募先でのどの業務・場面で貢献できるのかを具体的に示すことで応募の際に説得力を持たせることができます。

応募書類や面接では論理的な展開をすること

法律事務所での業務は論理的な説明力などが不可欠なので、応募書類や面接でも論理的な説明ができるかどうかを見られています。結論から先に述べ、端的な言い回しになるよう工夫しましょう。文章や表現が冗長、クセのある文章や言葉使いをする人は致命的と捉えられかねません。

まとめ

パラリーガルの将来性にはいくつかの不安材料がありますが、それを打ち消すだけの材料が豊富にあり、総合すると将来性は高いと考えられます。

ただし、将来性が高いからといって漫然とパラリーガルを続けていただけでは選ばれるパラリーガルになれないでしょう。スキルを磨き続けること、状況に応じて転職も検討するなど積極的に活動することが大切です。


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