パラリーガルになるには|必要なスキルや資格・具体的な転職方法をプロが解説
本コラムではパラリーガルになるにはどんな資格やスキルが必要なのか、15年以上にわたって国内唯一のパラリーガル専門スクールを運営し、数多くのパラリーガルを全国に輩出してきた、AG法律アカデミーが、詳しく解説します。
弁護士が活躍するドラマや映画には、弁護士のほかに「パラリーガル」という職業のキャストが登場します。弁護士とともに依頼者のために奮闘する姿を見て、パラリーガルに興味を持った方もいるのではないでしょうか?
パラリーガルは弁護士のように難関の国家資格に合格する必要はありません。そのため誰にでもなれるチャンスがある職業ですが、実際に活躍するためには必須のスキルや素養があります。
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パラリーガルになるには学歴・学位は必要?
パラリーガルになるために学歴や学位は求められるのでしょうか?
学歴・学位は求められないことが多い|学歴よりも「スキル」
パラリーガルになるために学歴・学位は必要ありません。パラリーガルは弁護士のように法律判断をするのではなく、法律事務の手続き関係を担当する職業です。
法律知識よりも書類作成や手続き事務のスキルを実地で身につけていくことが大切なので、大学の法学部等で学ぶよりも法律事務所で実務経験を積むほうが優先されます。
法学部や法科大学院出身ならアピールできる
法律関係の書類作成や手続きを行う以上は、一定の法律の知識が必要です。法律用語がいっさい分からないようでは弁護士の指示内容も理解できず、話にならないでしょう。
特に国内トップの5大事務所にパラリーガルとして入職する場合、法学部や法科大学院で法律を学んでいると法律の素養がある証明になるため転職の際には有利にはたらきます。
実際のところ、法学部や法科大学院出身で司法試験に合格できなかったためにパラリーガルになる人も多くいます。学歴・学位がない場合の転職はそのような人たちとの争いになるため、知識面では不利にはたらくでしょう。
そのため、これまでの社会人経験や資格などを戦略的にアピールする必要があります。
パラリーガルの主な仕事内容と弁護士秘書との違いは?
パラリーガルとは、法律事務所に勤務して、弁護士の指導・監督のもと弁護士業務の補佐を行う職業です。
別名はリーガルアシスタントともいいます。パラリーガルは弁護士のように国家試験に合格する必要はないため、誰でもパラリーガルになることができます。法律調査や書類の作成を通じて、法律問題に直面している依頼者の力になれるやりがいの大きい仕事です。
パラリーガルの仕事内容
パラリーガルは、アメリカでは法律協会による認定が必要な専門職としてその地位を確立しています。しかし日本におけるパラリーガルは定義が曖昧です。
そのためパラリーガルの仕事内容は所属する法律事務所によって異なりますが、以下に代表的な業務を挙げましょう。
- 判例調査、文献などの資料探し
- 訴状や準備書面など法律関係書類の作成
- 裁判所や官庁への手続き
- 弁護士との打ち合わせ前に行うクライアントのヒアリング
- クライアントとの日程調整
パラリーガルと弁護士秘書・事務職との境界線が曖昧な法律事務所では、弁護士のスケジュール管理や来客対応など法律に関わる業務以外も行っています。
パラリーガルにできない仕事
弁護士法第72条では、非弁護士の法律事務の取り扱いを禁止する旨を定めています。
パラリーガルは弁護士ではないため、クライアントの法律相談に乗る、弁護士の指導を受けずに法律関係書類を作成するといった法律行為はできません。
パラリーガルが依頼を引き受けたり報酬を決めたりすることもできません。あくまでも弁護士の指導・監督のもとで法律事務の補助を行います。
弁護士秘書や事務員との違い
弁護士秘書は弁護士のスケジュール管理や出張の手配、来客対応、郵便物の管理・発送業務などをする職種です。事務員は書類作成や来客応対、所属スタッフの給与・福利厚生の手続きなどをする職種を指します。
法律関係の書類作成や手続きを行うという点では、弁護士秘書や事務員よりもパラリーガルのほうが専門性の高い職種といえるでしょう。
ただし、日本におけるパラリーガルの定義は確立されていないため、明確な区別があるわけではありません。弁護士秘書や事務員という職種でもパラリーガルと同じような役割を求められる事務所も少なくないので、実際の業務内容は求人票や面接等でよく確認しておく必要があります。
また、最初は秘書業務や事務業務を行い、仕事に慣れてきたタイミングでパラリーガルの業務である法律関係書類の作成などを任されるケースも多くあります。
パラリーガルになるには資格は必要?
パラリーガルを目指す方の多くは未経験
パラリーガルの経験があれば転職で有利になることは間違いありませんが、未経験であってもパラリーガルになることは可能です。
法律事務所の求人を見ると「未経験歓迎」「未経験OK」と記載されているものが沢山あり、実際に未経験でパラリーガルに転職する人はとても多いです。
アメリカでは専門職として法律家協会の認定が必要ですが、日本ではパラリーガルになるための公的な資格(国家資格)はなく、誰でもパラリーガルになることができます。
現在パラリーガルとして活躍している人も、最初は未経験からのスタートでした。
未経験であってもパラリーガルになることは、決して難しいことではなく十分に可能です。
パラリーガル資格を持っていると転職ではかなり有利
日本では、パラリーガルは国家資格ではありませんが、一般社団法人日本リーガルアシスタント協会が認定しているパラリーガル資格があります。
たとえ法律事務所での実務経験がなかったとしても、法律事務の基礎知識を既に持っているということは、法律事務所への就職・転職活動を行う上では大きな武器となります。
パラリーガルが法律事務所で行う法律事務は、企業の事務業務とは全く異なります。
そして、企業よりも圧倒的に人員が少ない法律事務所において、ゼロ知識の未経験者を指導・育成するというのは、非常に負担が大きいのです。
したがって、法律事務の基本的なスキルが備わっていることを証明するパラリーガル資格を持った人は、採用する側の法律事務所(弁護士)から見ると、とても魅力的に映るため、パラリーガル資格は、法律事務所への就職・転職活動では大きなアドバンテージとなります。
社会人経験は必要?|ビジネスマナーや事務処理スキルは必要
パラリーガルに対して法律の知識は求めない事務所が多いですが、一方でビジネスマナーや事務処理スキルは最低条件と考えるケースが大半です。パラリーガルの教育制度を設けている事務所は少なく、パラリーガルをゼロから育てて戦力にするという考え方はあまりありません。
しかし、近年はパラリーガルを新卒で採用するケースも増えており、必ずしも社会人経験がないとパラリーガルにはなれないということでは、なくなってきています。
事務経験があれば採用されやすい
社会人経験がある人の中でも特に有利になるのは事務経験がある人です。事務職の業務は書類作成や公的機関への手続き、来客対応などパラリーガルの業務と類似性が高いため有利にはたらきます。
事務職としての調整力やコミュニケーション力を重視する法律事務所も多いので、事務職の経験を通じて周囲とどのように協力してきたのか等のエピソードも交えてアピールするとよいでしょう。
パラリーガルの名称にこだわらずに経験を積むことが大切
未経験の場合、最初は弁護士秘書や事務職の業務を担当し、資質がある人に関しては徐々にパラリーガルの業務も経験していくのが一般的です。
目の前の業務を丁寧にこなし、弁護士やほかのスタッフからの信頼を勝ち取っていくことでパラリーガルになる日は近づくでしょう。
転職の際には、「パラリーガルという名称にこだわらず、弁護士秘書や事務職であっても積極的に応募することが大切です。まずは法律事務所で働くことを目標に、業務範囲を広げていくイメージで取り組むのがよいでしょう。
パラリーガルになるにはどんなスキルが必要か
パラリーガルに求められるスキルについて解説します。
事務的なスキルが前提条件
パラリーガルは事務所内のアシスタント的な役割を期待されるため、事務的なスキルは必ず求められます。パソコンスキル、中でも書類作成に不可欠なオフィス系ソフトの操作スキルは必須です。事務処理の正確性やスピードも求められます。
事務的なスキルは汎用性が高いため、パラリーガル未経験でも身についているケースが多く、アピールしやすいでしょう。
法律事務の手続きに詳しいと有利
パラリーガルが扱う法律事務の手続きや書類は複雑です。法律事務の手続きに詳しく、どこの裁判所にどの形式の書類をいつまでに提出するか等をよく理解していると手続きがスムーズに進められます。
どの法律事務所でも通じるスキルなので転職の際には有利にはたらくでしょう。これからパラリーガルを目指す人は机上の勉強で身につけられるものではないので、地道に経験を積みながら身につけていくことになります。
管理能力は不可欠
答弁書や控訴申立書などの法律関係の書類は期限が決まっているものが多くあります。また訴訟期日にあわせて弁護士とクライアントのスケジュールを調整するなどの管理業務も発生します。
管理能力がなければ重要な書類の期日に間に合わない、訴訟期日までに十分な準備ができないなど大きな影響が生じてしまうため、管理能力は必須です。
語学力があると有利
海外案件を多く扱っている5大法律事務所などでは特に、法律関係書類の書面を翻訳する、クライアントとの通訳を担当するなどの業務が発生します。その場合、求人票に必須スキルとして語学力が明記されているケースが多いでしょう。
海外案件がない事務所であっても、クライアントが外国の方である場合などに対応できるため語学力は評価の対象になります。
コミュニケーションスキル・ビジネスマナー
パラリーガルは担当弁護士の指示を理解したうえで日常業務に取組み、クライアントと接する機会も多くあります。ほかの事務スタッフと連携して業務にあたることもあるでしょう。そのためパラリーガルを募集する際にコミュニケーションスキルを掲げる求人が多数です。
またクライアントへの対応や重要書類の取り扱いなど高いレベルのビジネスマナーが求められる職種でもあります。このあたりは採用面接でしっかりチェックされるポイントです。
特定分野に関する知識
弁護士事務所によっては不動産や金融、海外案件など特定の分野に力を入れています。そのため応募先の事務所で力を入れている分野の知識があれば、ほかの応募者との差別化が図りやすく、実際に転職したあとにも重宝されるでしょう。
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パラリーガのなり方|有利な資格はある?
スキルアップのための認定試験等は存在する
資格が不要とはいえ、これからパラリーガルを目指すうえで何か勉強をしたいと考える人もいるでしょう。法律を学ぶという意味では、大学の法学部に入り直す、法科大学院に入るなどの選択肢があります。
しかしパラリーガルになるために大学の法学部等に入り直して勉強するのは時間的・金銭的にハードルが高く、あまり現実的な方法とはいえないでしょう。
数は多くありませんがパラリーガルに関係する認定試験は存在します。またパラリーガルとは直接の関わりはなくても、実務で役立つスキルを身に付けられる民間試験を受験するのもひとつの方法です。
日本リーガルアシスタント協会の認定資格制度
国内唯一のパラリーガル資格に該当するのが、一般社団法人 日本リーガルアシスタント協会が実施する認定資格制度です。初級・中級・上級の三段階の構成になっており、法律事務所での実務経験がない人からすでに経験のある上級者まで幅広いタイプの人が受験できます。
ちなみに初級は基本的な法律用語と裁判手続きの流れ、基本的な書類処理ができるレベルまで学ぶことができます。大学等に入り直さなくても、パラリーガルとして必要な知識は学べるわけです。
日本弁護士連合会の認定制度
日本弁護士連合会(日弁連)では、法律事務所の事務職員を対象とした「事務職員能力認定制度」という試験・研修によってパラリーガルや弁護士秘書の実務能力の底上げを図っています。
法律事務職員として3~5年程度の経験がある人を想定した制度ですが、勤続年数の制限はありません。
法律事務所に勤務していることが条件なので全くの未経験者が受験することはできませんが、認定があると転職する際に有利になる可能性はあるため、今後のキャリアアップに役に立つでしょう。
MOSは事務処理能力のアピールになる
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)はエクセルやワードなどのマイクロソフトオフィス製品の操作スキルを証明できる資格です。
パラリーガルとは直接の関係はありませんが、法律事務所への応募で事務処理能力をアピールできますし、実際に転職した後も効率よく業務を進めるために役立ちます。
秘書業務も兼任するなら秘書検定も
弁護士秘書も兼任する場合には秘書検定試験に合格しておくと、秘書業務の基本やビジネスマナーを備えている証明になります。3級・2級・準1級・1級とありますが、履歴書や面接でアピールするなら2級以上に合格しておきたいところです。
法律系資格があると有利にはたらく場合がある
そのほかに司法書士や行政書士、社会保険労務士など法律系の資格があると評価されやすいでしょう。法律の素養がある証明になりますし、その分野の専門性を活かして働くこともできます。
またパラリーガルの中には司法試験の合格を目指しながら働いている人も多く、その場合は法律事務所で働きたいという志望動機や意欲が伝わりやすいでしょう。
パラリーガのなり方|向いているのはどんな人?
最後に、パラリーガルの適性について解説します。適性がないとパラリーガルになれても長く続けることが難しいため、あらかじめ確認しておきましょう。
法律に興味があり勉強を継続できる人
まずは前提として法律に興味がある人に向いています。法律は難解ですし、法改正や多数の案件に対応するためには継続的に勉強を続ける必要があるため、法律に興味がない人にとっては難しい業務になるでしょう。
法律に興味があるうえで、勉強熱心な人や長時間の調べ物も苦にならない人、将来的に司法試験や隣接士業の合格を目指して実務経験を積もうと考えている人などに向いています。
細やかな気遣い・サポートが得意な人
パラリーガルは担当弁護士や事務所のほかのスタッフ、クライアントなどたくさんの人を相手にする仕事です。弁護士やスタッフと協力しながら業務を進める必要があるため、周囲に気を遣いながら協調性を保って業務に取り組める人に向いています。
また法律事務所に相談に来る人の多くは精神的に辛いギリギリの状態で助けを求めているため、そのような人に対して繊細な配慮や言葉選びができることも大切です。
細かい気遣いができる人、人としての誠実さがある人に適性があります。
臨機応変な対応力がある人
法律事務所では次々と弁護士から指示があり、同時に別々の案件を処理していくため、臨機応変な対応力が必要です。これまでマニュアル通りに業務をこなしてきた人よりも、頭を使って考えながら業務にあたる癖をつけてきた人のほうがパラリーガルに向いています。
人の助けになりたいという志がある人
法律事務所に訪れるのは自分ではどうしようもできないほど深刻な悩みを抱えている人が多数です。弁護士は国が認めた法律の専門家として重大な責任を負い、そのような人の助けになるべく強い覚悟を持って働いています。
弁護士をサポートするパラリーガルもミスをすれば弁護士業務に影響を与える必要があり、その責任の一端を背負っているといえます。
安易な気持ちで取り組むことは許されないため、志の高い人でないと続けられないでしょう。根底に、困っている人の助けになりたいという気持ちがある人に適性があります。
専門スキルを身につけたい人
一般事務とは違い、パラリーガルの業務は事務処理だけではありません。パラリーガルは弁護士をサポートする専門職です。
法律事務所では、弁護士とパラリーガルがペアになって裁判や示談交渉などの法律業務を進めていきます。有能なパラリーガルがつくと弁護士の業務効率が飛躍的にアップするので、弁護士から強く要望されます。
「何か専門的な知識やスキルを身に付けたい」方にはうってつけの仕事といえるでしょう。
パラリーガルの3つのやりがいと魅力
大変な部分も多いパラリーガルですが、やりがいや魅力もあります。
法律事務のサポートを通じて依頼者の役に立てる
パラリーガルが大きなやりがいを感じるのは、法律事務のサポートを通じて依頼者(顧客)の役に立てた瞬間です。法律問題で困っていた依頼者から「ありがとう」を言ってもらえた瞬間は何にも代えがたい喜びがあります。
努力次第で成長を感じられる
パラリーガルが扱う法律には多くの分野があり、法改正も頻繁に行われます。その分大変な面がありますが、努力次第では自身の成長を感じ続けられるでしょう。パラリーガルの仕事は一定のスキルや知識を身に付ければ終わりではないため、成長意欲の高い方にとってはやりがいの大きな環境です。
Q2.法律事務のお仕事のやり甲斐や面白さ、魅力などについて教えてください。
法律事務というと、とっつきにくいと思われがちですが、身近に起こるトラブルを弁護士と一緒に法律に沿って解決することができ、依頼者から感謝の言葉をもらえると嬉しくなります。また、自分が希望すれば、取り扱える案件も増えていくので、常に新しいことを覚えることができ、やりがいがあります。
参考:現役で働く卒業生からのメッセージ
多様なキャリアプランがある
パラリーガルには多様なキャリアプランがあるため、パラリーガルになった後にも目標を持って働き続けることができます。たとえば今より待遇のよい法律事務所に転職する、司法書士などの国家資格を取得して法律に精通したパラリーガルになるといったプランがあります。
まとめ
パラリーガルになるために資格や学歴等は求められないケースが多いため、誰でもパラリーガルを目指すことができます。ただし事務処理スキルやコミュニケーションスキルなどは必須で求められますし、法律への興味や高い志がないと続けるのが難しい職業です。
なぜパラリーガルになりたいのか、自分に向いている職業なのかを冷静に分析したうえで法律事務所への転職活動を開始することをおすすめします。
AG法律アカデミー
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