「無効」と「取消し」って何が違うの?

「無効」と「取消し」

 

「無効」と「取消し」

社会生活でもよく使われる「無効」とか「取消し」といった言葉。

 

実は、この2つの言葉は法律の世界では意味が大きく異なることをご存知でしょうか?

民事事件を取り扱う法律事務所であれば、ほぼ間違いなくこれらの用語を用いることになるため、パラリーガルを目指す方は、これらの意味を知っておいた方が仕事をスムーズに進められます。

では、今回は、この紛らわしい「無効」と「取消し」について解説します。

 
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無効と取消しは、ともに法律行為の効果を否定する法技術

 

まず、「無効」は、そもそも最初から法律行為の効果が発生していないことをいいます。

 

たとえば、以下のような場合には、「無効」となります。
 

  • 意思表示をした者に意思能力がなかった場合
  •  

  • 法律行為が公序良俗強行法規に反する場合
  •  

  • 法律行為の内容がはじめから実現不可能な場合

 

このように、およそ法律効果を発生させることが無意味だったり、そもそも「意思表示をした」とはいえないような状況で、意思表示が行われた場合には、その法律行為は無効とされます。

 

これに対して「取消し」は、法律行為の効果それ自体は発生しています。

ただ、その法律行為に最初から傷がついている(法律で定められた取消事由がある)場合は、法律で定められた取消権者が、相手に対して「取り消します!」と意思表示することができます。
 
そして、取消の意思表示がなされると、法律行為の効果が初めに遡って消滅することになり、これを「取消し」といいます。

 

 

無効と取消しの一般的な違い

 

主張することができる人が違う

「無効」は、最初から当然に効力が発生していないものなので、基本的に、誰からでも、誰に対しても主張できます。

 

これに対して「取消し」は、一旦は法律行為が有効とされるため、法律に取消権者と定められた者だけが、相手方に対して主張できます。

 
 

「追認」によって有効とできるかどうかが違う

「無効」は最初から当然に効力が発生していないため、「追認」(後から有効にすること)できるとするのは、理論的にはおかしいということになります。

 
したがって、無効な行為については、追認をすることによって有効とすることはできません。

 

なお、当事者が無効であることを知ったうえで追認をした場合でも、遡って有効となるものではなく、追認の時点で新たな行為をしたものとみなされます。

 

これに対して、取り消すことができる行為については、法律に定められた者が、法律に則って追認をすることによって、法律行為の効果は有効となります。

 

 

時の経過によって影響を受けるかどうかが違う

「無効」については、当初から当然に効果が発生していないため、基本的にいつまでも無効の主張ができるとされています。

 

これに対し、「取消し」については、時効など一定期間を経過することによって取り消すことができる権利が消滅してしまいます。

 
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「無効」の「取消し」化?

 

ここまで見てきたように、理論的には「無効」と「取消し」は意味が異なりますが、裁判所の判断によって、「無効」が「取消し」に近づいている例もあります。

 

例えば、民法95条の「錯誤」(大きな勘違いをして契約を結ぶこと)を理由に無効を主張する場合は、「うっかり錯誤によって意思表示をしてしまった人」だけが錯誤無効を主張できるとされています。

 

これは、錯誤無効の制度趣旨が、「勘違いをして意思を表示してしまった人を保護する」という点にあることを考えると、錯誤に陥って意思表示をしてしまった本人に無効主張をさせれば足り、本人が「別にそれでもかまわない。」と言っているにもかかわらず、相手方に無効を主張させる必要性は全くないからです。

 

スマートなパラリーガルを目指そう!

 

日常でなんとなく使われている「無効」と「取消し」ですが、法律の世界ではここまで大きく意味が違います。
 
法律の世界は奥が深いですよね。

民事事件を扱う法律事務所において、パラリーガルのお仕事には、書類の構成や、誤字脱字がないかなどをしっかりとチェックする重要なお仕事があります。

その際に、しっかりと法律用語を理解して、正しい意味で使用できると、よりスムーズにお仕事を進めることができます。

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実際に頭や手を動かして覚えた知識は忘れにくいため、実務でも必ずや役に立つことと思います。

 

いつでも感覚を研ぎ澄まさせ、スマートに書面をチェックできるパラリーガルを目指しましょう!

 
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