【民法の基礎】相続って何だろう?(4)【遺言について】
「遺言」は一般社会では「ゆいごん」と読みますが、
法律の世界では「いごん」と読みます。
人は、自分自身の法律関係を自由に形成することができます。
この「自由に法律関係を形成する」というのは、
生きている間に限ったことではなく、死後についても同様です。
自分が死んだ後に備え、生前に、
あらかじめ自分の意思を表示しておくことを「遺言」といいます。
通常の法律行為とは異なる
遺言は、遺言者の死亡直前の最終的な意思を
できるかぎり尊重することを目的としているため、
財産関係の法律行為の場合より本人の意思が重視されます。
たとえば、下記の点で通常の財産行為とは異なります。
- 満15歳以上であれば、意思能力がある限り、
単独で遺言することができる(遺言能力、民法961条,963条)
- 代理人によって遺言することはできない(遺言代理の禁止)
- 遺言者は、生存中、いつでも何度でも
遺言の一部ないし全部を撤回・変更できる(民法1022条)
- 遺言の撤回の自由は放棄することはできない(民法1026条)
- 遺言は、常に新しいものが優先される
反面、遺言の効力は遺言者の死亡後に生じるところ、
遺言者の意思が本当に真意に基づくものなのかを
ハッキリしておく必要があるため、
遺言の作成には厳格な方式を守ることが要求されます(民法960条)。
また、遺言は、他人との法律関係を遺言者が
一方的に決めて押しつけるものなので、
法律関係を押しつけられる相手方の地位にも
配慮しなくてはなりません。
民法は、遺言によって形成できる法律行為を定めており、
その遺言事項に該当しない遺言は無効とされます。
種類・方式
普通方式の遺言と特別方式の遺言があります。
特別方式の遺言は希なケース(伝染病で隔離された場合など)なので、
ここでは、普通方式の遺言を紹介するにとどめます。
自筆証書遺言(民法968条1項)
遺言者が遺言書のの全文、日付、氏名を自署し、
これに押印すれば成立する遺言です。
自筆証書遺言の作成には、
証人や立会人、公証人の関与も必要ありません。
全文、日付、氏名を自署させることによって、
筆跡から本人が作成したことを判定でき、これによって
遺言が遺言者の真意に基づくものであることを担保します。
従って、筆跡がわかる方法で、かつ、
遺言書の用紙に遺言者自身が直接書いた場合に限って有効とされ、
他人に書かせたり、ワープロで打ったり、
テープに吹き込むという方法は認められません。
自筆証書遺言は、作成に法律の専門家が関与しないため、
費用が安くおさえれられるというメリットもありますが、
方式不備で無効になりやすかったり、
紛失や偽造等のリスクも高いというデメリットもあります。
公正証書遺言(民法969条1号~5号)
公正証書遺言は、公正証書によって作成する遺言です。
公正証書遺言は、証人2人以上の立会いの下で、
遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授(くじゅ)し、
公証人がそれを筆記して遺言者と証人に読み聞かせまたは閲覧させて、
遺言者と証人がその筆記が正確なことを承認して署名・押印した後、
公証人が「方式に従って作成した」旨付記して署名・押印して作成します。
公正証書遺言は、遺言書の作成に
法律の専門家である公証人が関与するため、
方式不備で無効になるというリスクが少なく、
また、原本が公証役場に保管されるため、
紛失や偽造等のリスクもありません。
反面、手続きが面倒で、
費用もかかるというデメリットもあります。
秘密証書遺言(民法970条1項1号)
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたうえで、
遺言書の存在だけを公証人に証明してもらう方式です。
秘密証書遺言は、遺言者が遺言書に署名・押印し、
遺言書に用いた印章と同じ印章で封じます。
その封印した遺言書を、公証人1名、証人2名以上の前に提出し、
「自分の遺言書であること」と「氏名・住所」を申述します。
公証人が、「提出日」と「遺言者の申述した内容」を封書に記載します。
そこに、遺言者、証人、公証人全員が署名・押印します。
秘密証書遺言は、本文自体を自書する必要はありませんが、
署名・押印については必ず本人が行う必要があります。
なお、秘密証書遺言が方式不備のため無効になったとしても、
自筆証書遺言の要件を満たしていれば、
自筆証書遺言として効力が認められます(民法971条)。
秘密証書遺言の作成には、
法律の専門家である公証人が関与するため、
公正証書遺言と同様のメリット、デメリットがあります。
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